ダラムサラで袈裟を大人買い

インドでは、ヒッピー風のダボダボパンツやナチュラル系の服装をした旅行者をよく見かける。しかしサドゥやチベット僧侶のような気合の入った格好をした外国人はあまりいない。他の地では少し浮いてしまう僧侶風の格好もここインドの小チベットことダラムサラではそれほど違和感はない。僧侶は町に溢れており、エンジ色の袈裟を着て颯爽と道行く姿には憧れさえ感じる。バス亭で袈裟をクールに着こなした白人男性を見たとき、「あ、外国人でも買えるんだ」と初めて気づいた。私も袈裟購入に挑戦してみたい。



旅行時期: 2009年3月後半
為替: 1ルピー = 1.88円
作成日: 2009.06.02

目次


お店

袈裟を買える場所はJogibara通りバザール近くにひとつ。あくまで地元向けなので目立たない。店の入口に袈裟が他の服と一緒に掛けてありそれが目印。中に入るとミシンで作業する女性と、その後ろに既成の袈裟を並べた棚があった。ここ以外に同様のお店は発見できなかった。


写真: 左:店の入り口。袈裟が目印。右:店内の様子。店の奥にミシンが2台。

補足

レディメイドの在庫の棚

購入アイテム

幸い、中には英語がわかる女性が一人おり、何を買えばいいか教えてくれた。全部で5点。エンジ系の色2,3種類から選べる。

アイテム 値段 説明
Sham Thap 450 スカート部分。筒状になった厚めの大きな布。
Maylauk 200 スカートの中にはくゴムスカート。大きかったので腰周りのゴムを詰めてもらった。
Thanka 250 ノースリーブのシャツ。黄土色もあり。
Sen 200 上に羽織るペラペラの布(夏用)。欲しい色がなかったのでその場で作ってもらった。
ベルト 150 Sham Thapを固定するベルト

定価販売。合計1250ルピー(約2500円)。予算の範囲内だ。 基本的にレディメイドだが、融通はきく。

補足

  • 各衣装の名前は人によってローマ字の綴りが違うので正確な発音は分からない。
  • 子供か女性用のような小さなThankaがあった。実際、ダラムサラにも尼さんは多い。

試着


袈裟アイテムを選んだ後、試着。勝手がわからないので店の女性に着付けしてもらう。

  • Thankaはボタンのない前開きシャツなので、そのまま着るだけ。ゴムスカートも履くだけ。
  • 外スカートのSham Thapは布が結構でかくて重い。筒状の布の中に入り、余分な布を中に折り込んで左右に折り返しを付ける。黄色いベルトで縛り、スカートを上から折ってベルトを隠す。別のやり方もあり、中に入らず、そのまま腰巻のように巻いてもOKらしい。
  • Senを羽織る。左肩に布を垂らし、右腕の下から布をぐるっと回して左肩にかぶせる。左手をちょこっと布の間から出しで完了。

質問タイム

試着の後、素朴な疑問をiいくつか店員に聞いてみたところ、

  • 今回購入したSenは夏用だが、冬用もある。外スカートのSham Thapに夏冬区別は無い。
  • 洗濯は手洗い。マシンでもOKとのこと。
  • トイレの方法を聞いたが知らないらしい。

最後に、一番の懸念事項を聞いて見た。僧侶でもない人が袈裟なんて着ていいのか。彼女によると、Tushita(Dharamkot の丘の上にある僧院風のメディテーションセンター)のコースに参加している外国人やノルブリンカの瞑想クラス参加者にも袈裟を着る人がいるらしい。町でみかけた坊主頭の白人男性は、出家した僧侶ではなく瞑想コースの参加者のようだ。

補足

施設URL

帰宅

袈裟を着たまま宿に帰り、購入したアイテムをチェックしてみる。ベットに広げ、Sham Thapのでかさを確認。ダブルベットの幅くらいある(このページの一番上の写真)。筒状なので布地はこの倍の長さ。Senも長いが、生地が薄いので4つ折にすれば嵩張らない。さて、ダラムサラはいいとして、他の町では着る機会はあまりない。Sham Thapはシーツ代わり、Senはショール代わり、ThankaとMaylaukは室内着、などにできなくはないが、やはり使わない荷物になりそうだ。今回の収穫は内スカートのMaylauk。これが予想に反して心地いい。フリースのパンツの上に履いて下半身の寒さ対策にもなる。生地やデザインも女性物とは明らかに違うので外で履いていてもそんなに変じゃない。男性スカートといえば、裁判オタクの阿曽山大噴火さんくらいしか思いつかないが、この分野、もう少し光が当たってもいいのかもしれない。


写真: 左: 外スカート(上)とショール(左下)とシャツ(右下)。 右: シャツと内スカート

袈裟ウォッチャー

袈裟を買って以降、町で見る僧侶の服装に注意がいくようになった。靴や靴下は自由でバラバラ。坂の多い場所だけあり、運動靴が多い。 Senの巻き方もよく見ると、いくつかパターンがある。ショールのように巻いている人もいる。SenとThankaだけでは寒いので、トレーナーやフリースなど温かめの服を着て、その上にSenを巻いている人をよく見かける。 中の服は赤色が多いものの、特に決りはないようだ。 僧侶によってはSenさえ身に着けていない人もいるが、そういう人でもSham Thapは必ず履いているのだった。 Sham Thapは履くのが面倒で一番省略したいアイテムなのだが、チベット僧にとっては譲れない一線らしい。確かにズボンやゴムスカートを履いた僧侶はあまり見たくない気がする。

最後に

せっかく買ってはみたものの、荷物は増える一方で、袈裟を持ち歩くのがかなり負担になってきた。 一ヵ月後、ある町のチベット僧院を訪れた時、仏像に向かって五体投地している若い僧侶がいた。試しに袈裟のドネーションを申し出ると、快く受け取ってくれた。迷惑でない証拠に、ニコニコしながら何度も頭を下げていた。 五体投地でもしているかのように。そして私の短い「袈裟のある生活」は 終わりを告げた。

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