オールドマナリーの日々

 

マナリーといえば、歴史あるヒッピーの巡礼地である。もちろんこの場合、マナリーは市街地のニューマナリーではなく、オールドマナリーやバシシトなどの近隣の村を指す。通りを歩けば、一日一度は「Do you want to smoke?」と尋ねられるチャラス特区でもある。夏になると、ゴア在住の外国人が渡り鳥のように移住してきて、夜な夜なレイブパーティを繰り広げる.. らしい。実際に見たことないのでその真偽や程度は分からない。4月始めのこの時期は、まだまだオフシーズンで観光客も少なく落ち着いている。そんな古き良きオールドマナリーを味わって見たい。


旅行時期: 2009年4月前半
為替: 1ルピー = 1.98円
作成日: 2009.06.02

目次




アクセス

  オールドマナリーは、マナリー市街から2キロくらい。オートリキシャでマニ寺院まで50ルピー、橋の入り口までなら、もう少し安い。


補足

Tiger Eye G.H.


Yun Cafe




民家に泊まりたい

これまで便利なニューマナリーに宿を取っていたが、オールドマナリーに移ることにする。オールドマナリーは、古い集落の真ん中に大型ホテルがドンとあることはなく、少し距離を置いた辺りに点在している。一番多いのが、ニューマナリーから来て橋を超えた辺りのエリア。クラブハウスの上の丘や、ドラゴンゲストハウス周辺。川沿いのカフェなどもあり居心地はよさそうだ。便利で賑やかだが、やや趣に欠ける。他には、集落の中心からずっと川に向かって下っていき、その先には畑しかないような場所にタイガーアイ・ゲストハウスなど2,3軒。マヌ寺院を超えて舗装道路が途切れて山道に入る辺りに眺めのいいゲストハウスが3,4 軒。マヌ寺院方面へ曲がるT字路の左手の丘の上に名もないゲストハウスが3,4軒。こちらも眺めがいい。

古い木造の民家に泊まりたい私は、散歩しながら現地の人に探りを入れていた。そこで返ってくる答えが、「あるけど10キロ先」「部屋はなくはないが、トイレがない」、「残念だが空いている部屋がない」など。みなさん小さな家に大家族で住んでいるようで他人に貸し与える部屋などないようだ。他の観光地ならありそうな、「現地の家族の家にホームステイ」とか「伝統的民家をモチーフにしたホテル」などはここにはないらしい。唯一イメージに近いのが民家を改造した韓国レストランYUN Cafe。頭をぶつけそうな低い天井の家の2階がレストランになっている。これも残念ながらゲストハウスではない。

昼飯をご馳走になる

丘の上のエリアを物色していると、「部屋はないが、うちで食事でもどうですか」と声をかけてくれる男性がいた。お言葉に甘え、昼飯をいただくことにした。その家は見晴らしのいい丘の上に建っており、実に景色がいい。この家も伝統的なスタイルで、一階に牛小屋、二階に住居。外に面したところに機織り機が置いてある。家の前の広場では、近所の人達が井戸端会議をしている。外の階段を登り2階に上がる。中には、小さなダイニングキッチンの部屋とストーブのある広めの居間があった。テーブルのないダイニングで座ってチャイとダルカレーをご馳走になり、家を後にした。


写真: 上:2階のダイニングから広場を見下ろす。 左: ダイニングは縦長で4畳半くらいの大きさ
   右: 薪ストーブのある居間。冬のマナリーは積雪がある。  

マイ別荘を見つける

 

ホテル探しを続ける。民家への宿泊はとりあえず棚上げし、景色のいいゲストハウスを探すことにする。ガイドブックで紹介さ れているゲストハウスのほとんどは橋に近いエリアのものだが、見晴らしのよさを考えると、村の集落より上に位置しているゲストハウスがいい。となると、マヌ寺院の先のゲストハウスがよさそうだ。一番高い所にあるのはTop Skyだが、重いバックパック背負って少し山道を登るのは大変だ。ここは妥協して寺院からそれほど遠くない一見高級そうなゲストハウスをチェックすることにした。中に入ってみると、やたらと広い部屋にやたらと広い室内テラス。全体的に古さを感じるが、テラスからの眺めがよかったのでここに決めた。客は私ひとり。何か、古さと豪華さが共存した”寂れた別荘地”を思わせるそんなゲストハウスだ。


 写真: 上: マイ別荘からの眺め + オーナー親子。右側にオールドマナリーの集落、正面森の向こうにニューマナリー。
  左:
広い室内。確か250ルピーくらい。 右: し ばらく書斎代わりになった室内テラス。 

宿泊して分かるのが、この場所の不便さ。唯一の食堂が、マヌ寺院前のノンベジ・レストラン、マヌ・カフェ。この先まともなレストランに行こうとすると、ドラゴン・ゲストハウス近辺まで500メートルほど坂を下っていかなければならない。インターネットや旅行会社に関しても同じ事情だ。村の上のほうはツーリスト・インフラがあまり整っていない。同じ沈没地のダラムサラやリシケシとはえらい違いだ。おかげですっかり出不精になり、ますます別荘地にいるような生活をしてしまうのだった。



村を散策

村 の雰囲気を満喫するはずが、村はずれの別荘に篭ることになってしまった。 初心に帰り、再び村の散策に出かける。村の集落に入れば古い民家のオンパレード。今にも崩れ落ちそうな家 がいくつかあるが、雪のシーズンは大丈夫なのだろうか。どの家もたいてい牛を飼っており、集落の中に住めば朝は牛の鳴き声で起きることになるだろう。村を川方面に下りて行くと一面に畑が広がっている。そこで刈った草を籠に入れて、息を切らしながら坂を上ってくるおばあさんによく出くわした。体が動く限り彼女たちも現役なのだろう。


写真: 上: よくある民家。木製のバルコニーはボロそうだが、家本体は頑丈そう。
  左: 村と川の間の畑。村には野良犬がいる。 右: 農作物を運ぶおばあさん。 


村は外国人バックパッカーに人気だが、インド人観光客は車でやってきてマヌ寺院だけ見て帰っていく。マヌ寺院手前のスペースは地元の子供らの絶好の遊び場になっている。斜面の上に村があるので、平らで広いスペースはあまりないのだ。


写真: 左: マヌ・カフェ屋上テラスからみたマヌ寺院  右: 寺院の前で1人遊びをする子供。

手編みのセーターが欲しい


村を散歩していると目に付くのが、家の軒下でショールを織る女性。機織り機などどこの山村でもあるが、オールドマナリーの場合その稼働率が非常に高い。ショールなど一家に何枚も要らないのでたぶん内職だろう。ある日、自分にも一枚作ってくれないかと聞いてみたことがある。既製品ではなく、生産者の顔の見えるオーダーメイドの作品だ。


その女性の話によると、まずニューマナリーの毛糸屋に行き、使う色の毛糸を買ってくる。量や種類は店の人に聞けば分かる。そして、買ってきた糸を村の女性に渡して織ってもらう。ショールなら2日。セーターなら手編みで3日あればできるとのこと。機織りスキルのある女性は村中にいるので、頼めば気軽にやってくれそうな雰囲気だ。デザインの指定はどうするのか、料金の相場はいくらくらいなのか。など細かい点は聞き忘れたが、数日以上の滞在ならぜひ試したみたい。メイド・イン・マナリーのセーターいかがですか?

写真: 上: バルコニーの下でショールを編む女性  下: 毛糸屋。マナリーならバスターミナル横のバザールの中にある。

バシシトへ強硬トレッキング

マイ別荘からもよく見える対岸のバシシト村。普通に行こうとすれば、橋のあるニューマナリー経由になり、2km + 3kmとかなり遠回りだ。一直線にいきたいが何しろ近くに橋がないのだから、川を歩いて渡る以外に近道はない。 現地の人に聞いてみても「水が冷たいから無理」「Goshalの先の橋を使え」などとポジティブな答えが返ってこない。とはいうものの、ソランにトレッキングした時は問題なく支流を渡れたし、この時期水量もそんなに多そうじゃない。一ヶ所ぐらい渡れそうな所があるだろう、と希望的観測のもと、バシシト村へ向かった。

写真: オールドマナリーから見た対岸のバシシト。オレンジ色の家のあたりが一本目の近道

 

まずはマヌ・カフェの横の小道を川の方向に下っていく。最初は、道はコンクリートだが途中から農道になる。オールドマナリーの集落とビアス川の間には農地と果樹園があり、これが結構広い。道を間違えなければ20分ほどで水色の屋根の建物に行き当たる。すぐ手前がジープ道になっており、崖の下に川がある。このジープ道はGoshal村の先ヘと続いている。

写真: 川沿いに建つサービスアパートメント Himalayan ecstasy

川の向こうにバシシトの村が見える。バシシトは山の中腹に位置しており、ニューマナリから1.5kmくらいの所にバシシトへ続く坂道がある。坂を少し上ったあたりから道が平行に伸び、1km先の中心部まで道路沿いに家やゲストハウスが並ぶ。車で行くにはこの道しかないが、下の川沿いの道路からバシシトまで徒歩で登れるショートカットが2本ほどある。一本目は坂の入り口から北に500メートルほど。さらに500メートル先にもう一本ある。今、ここで川を渡ることができれば1本目のショートカットが使える。

所々に崖から川に降りる道があるので川原まで下りてみる。川を渡れそうな所を探すのだが、なかなか見つからない。川幅はそんなに広くない。水面から出ている岩や石は沢山あるのだが、その間隔が広めで、3段跳びの選手ならいけそうだが、自分にはちょっと無理だ、というのが多い。水位があと20センチ低ければ問題なく渡れるのだが。あきらめてジープ道に戻り、渡れそうな所を物色しながら先に進むことにした。

写真: 斜め前方にバシシト村はみえているが川を渡る場所がない。川の流れは速い。


この川沿いのジープ道は通る車がほとんどないのでトレッキング気分で歩ける。結局、確実に渡れる所が見つからず、Goshal村のすぐ近くまで来てしまった。バシシトへの2本目のショートカットもすでに通り過ぎている。

川を渡るのを断念しかけた時、意外なものを発見した。川の両端をロープで結び滑車のようなもので渡っている人が いたのだ。有料(100 ->50)だが、背に腹は替えられない。私も、このサービスを使い対岸へ渡った。渡った先には掘っ立て小屋の集落がある。ここからバシシト 村へは、道を戻る必要があるがそんなに遠くはない。少し歩くと、小川に沿った登り道が見えてくる。これが2本目のショートカット。それを登って行くと、すぐにバシシト村の北側の集落に出る。そこから道にそって歩くと、温泉のあるバシシト・マンディール寺院に出る。 時間は計ってないが、迷わなければ1時間から1時間半くらいの行程。畑と川を一直線に突っ切る予定が、少し遠回りになってしまった。ちょっと不満が残るが、舗装道路をほとんど歩かず、ここまで来れたことは素直に評価したい。

写真: 上: 川渡し。主に観光シーズン(4-6月)に営業。対岸の掘っ立て小屋を通り、バシシト(斜め後方)まで戻る。
  下: 川の上横断中。 腰にハーネスを巻き、滑車をつける。 両手でロープを握り、カニのように進む。


Google Map

今回のルートと通常のニューマナリー経由のルートをGoogle Mapで比較してみた。その結果、通常ルート = 約5.5km, 直通ルート = 約3kmということがわかった。苦労は無駄ではなかった。 

ルート: ピンク = 直通ルート 赤 = 通常ルート
街: 緑: オールドマナリ 水色: バシシト 茶色: ニューマナリ


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