インドガイドブックを勝手に採点


旅行ガイドブックと言えば、日本語なら地球の歩き方、英語ならロンリープラネットが定番だ。共に幅広く国をカバーしており、一定の評価を得ている。インドに限れば、英国の出版社が出しているラフガイドフットプリントも力を入れていて、ぱっと見、内容的にもロンプラと遜色ない。どれがいいかは、実際に使ってみないとわからない。ということで、それぞれ最新版を古本屋で大人買いし、比較の旅に出ることにした。 


目次: Top | 地域別 | ジャンル別
地域: インド - 全般
ジャンル: ガイドブック

旅行時期: 2009年前半
為替: 1ルピー = 1.91円
作成日: 2009.06.11

目次


補足

ロンプラには英語版と日本語版があるが、両者は全く同じというわけではない。主な違いを挙げると

  • 日本語版では、英語版の内容が一部省かれている。特にヒマチャル州ではカバーされなかった町が多い。
  • すべてのEditionに翻訳版が出るわけではない。インドについて言えば、前回(2003年版)から今回(2007年版)までの間で、2005年版をスキップした。よって日本語版の情報の古さは1年から5年と幅が広い。
  • 英語版と違い、日本語版はさすがに紙質がいい。
  • Amazonで買った場合、英語版のほうが安い。

イントロ

4冊のガイドブック

三冊とも個人旅行者向けのガイドブック。節約型のバックパッカーからリッチな旅行者まで幅広くカバー。対象読者層に大きな差はないが、傾向としては、ロンプラが若者やバックパッカー向けで、ラフガイド、フットプリントがやや大人向け。今回は地球の歩き方も一緒に比較した。

使用したガイドブックと入手方法
ロンプラ

Lonely Planet India (2007 Sep - 17th edition)

入手方法:
  • 海外:バックパッカーの多い町の本屋ならある。古本、コピー本も豊富。
    インド(新: 1100rs, 旧: 800rs, 背表紙無し旧版:300rs)  
    タイ(新1075B 旧400-600B)
  • 国内: 洋書を扱う大型書店かアマゾン(2655yen)または翻訳版(3360 yen)
  • PDF版: 必要な部分だけネットで購入できるがかなり割高。
ラフガイド

Rough Guide India (2008 Oct - 7th edition)

入手方法:
  • 国内: アマゾン (2655yen)
  • 海外: デリー、コルカタ、カトマンズ、バンコクなどで一定数見かける。ロンプラの次にメジャーなガイドブック。
    インド(新: 800rs, 旧 4-600rs)  タイ(新850-1100B, 旧300-600B)
フットプリント

Footprint India Handbook 2009 (2008 Sep - 16th edition)

入手方法:
  • 国内: アマゾン (2328 yen)
  • 海外: デリー、コルカタ、カトマンズ、バンコクなどでたまに見かける。
    インド(新: 800rs, 旧: 4-600rs) タイ(新1142B)
歩き方

地球の歩き方 2007-2008 (2007 Aug - 23th edition)

入手方法:
  • 国内: 本屋 (1869 yen)、図書館 
  • 海外: デリー、カトマンズ、カオサンの古本屋で一定数見かける。
    バンコク、シンガポールなどの紀伊国屋に新書あり。
    インド(旧 4-800rs) タイ(新 915B, 旧300-500B)
  • 今回、歩き方のみ1年古い版、それ以外は最新版を使用。
  • 入手の容易さ、値段などは採点に考慮しない。
  • タイの新書の相場は紀伊国屋のもの。 日本での値段は税込み。

比較の旅

デリーでガイドブックを買い揃え、比較の旅に出発。目的地に到着したら、まず4冊読み比べる。当然のことだが、各ガイドブックは同じではない。Aでは、軽く書かれていたものが、Bでは大きく紹介されていたり。Aだけにしか載っていないレアな情報があったり。 ホテルのセレクションも重複が少ない。今回の旅行が充実したものになったのも、4冊のガイドブックに支えられた情報量に負うところが大きい。一冊でも欠けていたら、ここまで楽しめなかっただろう。 それでは、各ガイドブックの評価に移りたい。

紙質、携帯性

 
 写真: 左側: 表紙一覧。 左から、ロンプラ、ラフガイド、フットプリント。 
 右側: 厚さ。 左から、ロンプラ、ラフガイド、歩き方、フットプリント。

採点

紙質、携帯性(5点)

紙質、携帯性 (5点)
ロンプラ 2点 1236 pages   19.6 x 12.8 x 4.8 cm  920g
ザラザラの丈夫な紙を使用。ページ数の割りに分厚い。
ラフガイド 2点 1440 pages  19.8 x 12.4 x 4.4 cm
教科書のようなつるつるの紙を使用。
フットプリント 3点 1616 paegs 18.2 x 11 x 4.4 cm 
辞書のような薄い紙を使用。唯一のハードカバー。 最新版より小型化し、縦横一回り小さくなった。背表紙がやわらかいので手で押さえなくても読める。持ってるとちょっとかっこいい
歩き方 5点 535 pages 21 cm 13.6 cm 2.2 cm  520g
質のいい紙を使用。シリーズの中では分厚いほうでも、他と比べたら携帯性抜群。

小計: 歩き方: 5点、フットプリント: 3点、ラフガイド: 2点、ロンプラ: 2点

コメント

  • ロンプラだけ紙質が悪く重いが、それは丈夫さの裏返しでもある。
  • 最初は海外ガイドブックの分厚さに抵抗感があったが、慣れてくると、普通にリュックにいれて持ち歩き、普通に取り出して情報を見る。歩き方の使い方と何ら変わらなかった。
  • フットプリントは比較的コンパクトなので、トレッキングに持参することが多かった。

カバー範囲、歴史、文化、遺跡の情報

どれくらい多くの町、地域、観光地をカバーしているか。また、遺跡や寺院などの歴史、文化や建物の詳細などをどれだけ詳しく紹介しているか。

採点

 カバー範囲(5点), 歴史、文化、遺跡の詳細情報(5点)、計10点。

カバー範囲(5点)
ロンプラ 5点 かなり小さな町でもホテルを掲載。
ラフガイド 3点 小さな町の情報は少なめ。
フットプリント 4点 情報量にムラがあるも、だいたいカバー。
歩き方 2点 メジャーなところはカバーされているとはいえ、やはり不十分。
歴史、文化、遺跡の詳細情報 (5点)
ロンプラ 3点 一通りカバー
ラフガイド 5点 少なくともロンプラの2倍の情報量
フットプリント 5点 場所によっては驚くほど細かく書いてある。遺跡の配置図を載せて詳しく説明。
歩き方 2点 最低限の情報

小計: フットプリント: 9点、ラフガイド: 8点、ロンプラ: 8点、歩き方: 4点

コメント

  • ラフガイドとフットプリントの英国組は、文化、歴史などの情報がめっぽう詳しい。 インテリに好まれる理由がこれ。 ただ、ほとんどの人にとってはロンプラや歩き方の情報で十分なのだろう。
  • 今回重点的に旅行したヒマチャル州は、歩き方だとダラムサラとマナリー(さわりだけ)くらいしかカバーされていない。
  • 一生行きそうもない小さな町のホテル・みどころ情報から、都市のヨガ・料理コースの詳細まで、インドのガイドブックを作るのにどれだけの労力が要るのかと思うと気が遠くなる。

補足

  • マナリーのソランをカバーしているのはロンプラだけ。
  • スリナガル(カシミール紛争地帯)に関しては、詳細カバー(ロンプラ)、最低限カバー(フットプリント)、スルー (歩き方、ラフガイド)
  • デリーのレッドフォート、ナランダーの仏教大学跡など、フットプリントだけ配置図付で説明しているものがいくつかある。

地図

インドのような、正確な地図のない国では、地図作成に非常に手間がかかり、差がつきやすい。

採点

街の地図(5点),広域の地図(3点)、計8点

町の地図 (5点)
ロンプラ 2点 白黒。ホテル、レストラン、銀行、観光スポット、ショッピング、交通機関などすべて地図上の番号で参照するのでごちゃごちゃしている。 アイコンも小さすぎて見にくい。街全体を把握するというよりは、探している店や場所を探すための地図。地図も雑で不正確なのが多い。ただ、紹介した店やホテルを地図上にすべて掲載しようとする姿勢はいい。
ラフガイド 5点 3色。地図の正確さを売りにしているだけあり、細かくて見やすい。ホテルはA,B,C、レストランは1,2,3という形で地図上の記号と店名を参照。その他の情報は直接地図に書き込んである。情報を絞ってあるので、他のガイドブックにあるA1,B2,,などの地図上の位置を参照する記号は使われていない。
フットプリント 4点 3色。ラフガイドの次に見やすく正確。ラフガイド同様ホテルとレストラン名のみ番号で参照。アイコンの色で2つを区別している。
歩き方 4点 カラー。カラーですべての情報が地図に書き込んであるので見やすい。その分情報量と地図の細かさが少しだけ犠牲にされている。マイナーな街での地図の不正確さは30年近く経ったいまでも変わらない。正確な地図が入手できる大都市(バンコク、香港とか)では力を発揮するが、インドではいまいち。
広域の地図 (3点)
ロンプラ 1点 インド全体(カラー)と州ごと(白黒)の地図。道路網、線路網、町の位置関係の把握に使える。
ラフガイド 2点 インド全体(カラー、鉄道網)と州ごと(3色)の地図。州ごとのは大きくて見やすい。
フットプリント 3点 インド全体(カラー、7つ詳細地図と鉄道路線図)と州ごとの地図。州の地図は近隣の州の情報も省略せずに載せてあるので使い勝手がいい。インド全体の地図は地図帳並に細かい上、都市名のインデックスまでついている。
歩き方 1点 インド全体(カラー)と州ごと(カラー)の地図。道路網、線路網、町の位置関係が大雑把にわかる

小計: ラフガイド: 7点、フットプリント: 7点、歩き方: 5点、ロンプラ: 3点

コメント

  • ラフガイドとフットプリントのもうひとつのセールスポイントがきれいな地図。 ラフガイド社は地図の発行も行っている。
  • 単に街歩きや観光地めぐりに持っていくのなら、軽くて地図も見やすい歩き方だけでOK。ただし一定の確率で道に迷うことになる。

地図の例 - ジョードブル

  • ロンプラ  家のアイコン(ホテル)とスプーン・フォークのアイコン(レストラン)

  • ラフガイド アルファベット(ホテル)と番号(レストラン)
  • フットプリント 赤い番号(ホテル)と黒い番号(レストラン)

広域地図

  • フットプリント 南インド

補足

  • ダージリンの地方行政事務所(シッキム許可証の申請)の位置を唯一正確に載せているのはラフガイドだけ。
  • ケララ州のバックウォーターの水路図をある程度正確に載せているのはフットプリントだけ。

交通

交通情報全般

採点

都市間のアクセス(5点)、市内交通(2点)、国境越え(1点) 計8点

町から町へのアクセス情報 (5点)
ロンプラ 5点 バスや列車、飛行機の料金も載せている。大きな町の場合、表になっていて見やすい。 Getting there and Away セクションにまとめて書かれている。記載の目的地の数も多い。
ラフガイド 3点 到着時の情報、他の町への移動時の情報、バスや列車の細かな情報がそれぞれ別の離れたセクションに書かれている。
フットプリント 4点 到着・移動時の情報とバスや列車の詳細情報が別のセクションに書かれている。情報量は多いが、表になっていないので見にくい。
歩き方 2点 列車名や所要時間などある程度具体的に書かれているが、載っている目的地の数が少なく、情報も他のガイドブックほど細かくない。
市内交通 (空港へ、市内バス、タクシー、リキシャの相場) (2点)
ロンプラ 2点 空港へ/からの交通情報はGetting Aroundの所に詳細に書かれている。リキシャやタクシーの相場はほとんどの町で書かれている。デリーの地下鉄の路線図あり。
ラフガイド 1点 空港からの交通情報は到着時の情報のところに書いてある。空港への交通情報ははっきり書いてないことが多い。リキシャなどの相場は大きな都市のみ。
フットプリント 1点 空港へ/からの交通情報はTransportのところに簡潔に書かれている。リキシャの相場は大きめの街だとTransportのところに書いてある。
歩き方 2点 空港へ/からのアクセスはページの端のスペースに具体的に書かれている。リキシャの相場は大きな町だとかなり具体的に書かれている。都市によっては観光地への公共バスでの行き方など詳しく書かれている。
国境越え情報 (1点)
ロンプラ 1点 巻末の交通情報で、ネパール、ブータン、バングラ、パキスタンの国境情報あり。国境近隣都市のところでさらに詳しい情報あり。
ラフガイド 1点 国境近隣都市のところで情報あり。
フットプリント 1点 巻頭の入国方法のところに情報あり。国境近隣都市のところで出国方法の情報あり。
歩き方 0点 ネパールへの国境越えのみ記載。歩き方らしくない。

小計: ロンプラ: 8点 フットプリント: 6点、ラフガイド 5点、歩き方: 4点。

コメント

  • ラフガイド、フットプリント共に情報量はロンプラと大きな差はないが、やや使い勝手に劣る。
  • 海外ガイドブックは都市間の交通情報が充実していて、歩き方はことインド編に関しては全く及ばない。

列車情報の例

  • ロンプラ - デリー発の列車の詳細一覧。 行き先、列車番号、クラス別運賃、所要時間、発車時刻、発車駅。



補足

  • アムリトサルの黄金寺院から国境へ乗り合いジープが出ているのを書いているのはロンプラだけ。

宿、食事、買物

最も差別化できる分野。

採点

ホテル(5点)、レストラン(3点)、ショッポング(2点)、計10点

ホテル (5点)
ロンプラ 5点 安宿(例:200-600)、中級(450-1800)、高級に分けて紹介。値段は具体的。紹介文もわかりやすい。安宿の掲載が充実
ラフガイド 3点 安宿、中級、高級に分けて紹介。場所によっては掲載数やや少なめ。厳選されているようなそうでないような。具体的な価格を載せるかわりに価格帯に番号を割り振って記載。たとえば [1] – 200ルピー以下、 [2] – 200-300ルピー, [3] 300-500ルピーなど。
フットプリント 3点 安宿、中級、高級などの区分けなし。ラフガイド同様価格帯で表示。LLが200ドル以上、Aが66-100ドル。Fが7-11ドルでGが6ドル以下など。 高いホテルから順に掲載。コードと価格帯の一覧がラフガイドのように表紙の裏にでもあればまだいいが、そうでないのでいつもFやGがいくらなのか忘れてしまう。紹介文が味気ないので、どのホテルがいいのか判断が付きにくい。ホテルの部屋数をきちんと載せているところは評価できる。 
歩き方 3点 安宿、中級を中心にバランスよく掲載するも、掲載数少なめ。大都市以外は平均して他のガイドブックの三分の一程度。情報の少ない町は読者投稿でカバー。値段は具体的。 掲載数が少ないので、なぜこのホテル??というのがよくある。
レストラン (3点)
ロンプラ 3点 想定予算情報あり。営業時間の記載のあるものもある。Quick Eatという別のセクションで軽食や屋台もカバー。
ラフガイド 3点 想定予算情報あり。紹介文はまあまあ。
フットプリント 1点 具体的な予算ではなく、フォークのアイコンの数で、12ドル以上、7-12ドル、6ドル以下に分類。ホテル同様、どのアイコンがいくらなのかわからなくなる。 料金の幅が大きすぎる。紹介文は味気ない。
歩き方 1点 やはり記載数が少ない。全くない町もある。
ショッピング情報 (2点)
ロンプラ 2点 ほとんどの町で情報提供。
ラフガイド 1点 情報少なめ。
フットプリント 2点 ある程度カバー
歩き方 1点 定番以外情報少なめ。

小計: ロンプラ: 10点、 ラフガイド 7点、 フットプリント 6点、 歩き方 5点。

コメント

  • 料金が具体的に載せてあるロンプラと歩き方は相場の参考になる
  • ロンプラが圧倒的な情報量と使いやすさで満点。
  • フットプリントの紹介文が味気ないのは、客観性を重視しているからかもしれない。
  • それそれ、ちゃんと取材しているようでホテルのダブりは驚くほど少ない。 ロンプラ掲載の安宿に客が集中するかというと、なぜ かそうはならない。


使い勝手

使用してみて初めてわかる使い勝手の違い。

採点

目次、索引(3点), 構成(3点),読みやすさ、文体(3点),写真(3点),情報の鮮度(3点)  計15点

目次、索引(3点)
ロンプラ 3点 目次には町の名前まで出ているので目的のページに一発で行ける。州ごとにタブが付いており、またページ上部にそのページで扱っている町の名前が出ているので、めくりながら探しやすい。索引も細かく便利。
ラフガイド 0点 目次には州の名前しか出ていないので、特定の町を探すには、まず、その州のセクションへ行き、そこから順に探していくか、索引から探すほうが早い。 州の名前はページ横に書かれているが、タブ状になっておらず意味がない。また、扱っている町の名前はロンプラと違い、ページの横に縦書きが書かれているので読みにくい。
フットプリント 1点 目次には州と大まかな州内のエリアしか書かれていない。例えば、マナリーはクリー・バレー、シムラは南ヒマチャル、というようにあらかじめどこにあるのか知らない場合は、その州のセクションのページまで行き、別の目次を見ることになる。索引は簡潔でやや使いにくい。ロンプラで"トレッキング"で探せば、町の一覧とページ番号が見つかるが、フットプリントの場合、単にページ番号が並んでいるだけ。
歩き方 3点 普通に使える。特に問題なし。索引は地名のみで、実際に使う機会はあまりない。
構成(3点)
ロンプラ 3点 [イントロ文、町の歴史、オリエンテーショ ン、基本情報(観光案内所、銀行、郵便局、病院、ネットカフェ..)、観光スポットの紹介、ホテル、レストラン、 ショッピング、町へ/からの交通情報、市内交通]が基本フォーマット。町により、ツアー情報、アクティビティ(ボランティア、ヨガ、各種コースなど)、エンタメ情報(映画、ナイトクラブ)などが追加される。基本的に同じフォーマットで探しやすい。
ラフガイド 2点 [イントロ文、町の歴史、到着時の情報、(市内交通)、ホテル、観光スポットの紹介、レストラン、ショッピング、リスティング(基本情報)、他の町へ移動するときの情報]が基本フォーマット。長距離バス、列車などの詳細な交通情報は、州ごとにまとめて別ページに書かれている。 前から順番に読むような構成になっているが、かえって効率が悪い。例えば、交通情報は最初の「到着時の情報」と最後の「他の町への移動の情報」と別ページの「詳細情報」の3つに分かれており使いにくい。
フットプリント 3点 3つのセクションに分かれている。 1. イントロ(町へのアクセスと市内交通、歴史), 2. 観光スポット、3. リスティング(ホテル一覧、レストラン、ショッピング、交通詳細、基本情報)。 リスティングのところは複数の町がまとめて書かれているのでそのページまで飛ぶ必要がある。 リスティングのページは文字の小ささもあり、データブックのような佇まい
歩き方 3点 [イントロ、街のオリエンテーション、観光スポットの紹介、ツアー情報、ホテル、レストラン]が基本フォーマット。 アクセス、交通情報、ネットや銀行の情報、観光地の入場料や開門時間は本文の外側のスペース記載。慣れているので読みやすい
読みやすさ、文体(3点)
ロンプラ 2点 背表紙が硬いので中央付近のページはページが丸まってしまい読みにくい。それが問題にならないのはロンプラのレイアウトが1ページ2列になっているから。ページの半分の長さで折り返しているので視線を左右に動かす必要がない。また観光スポット他各種情報も小見出しをつけて細かく分けているので情報が探しやすく、リズムよく読める。 平易な英語で書かれており読みやすい。
ラフガイド 1点 紙の質がよく(明るい白、ロンプラはくすんだ白)読みやすいはずなのだが、フォントや文字間隔の関係か読みにくく感じる。ひとつのセクションも長く読んでいる途中で疲れてしまう。文章も文語チックで、やや回りくどい。
フットプリント 1点 フォントが小さく(細く)、読んでいて疲れやすい。簡潔で的を得た説明文だが、文章に遊びがないため、少々堅苦しい。ラフガイド同様、情報が文章中にちりばめられているので頭の中で整理する必要あり。
歩き方 3点豊かなレイアウト。文章もダイナミックで読みやすい。やや押し付けがましい語り口もインド版の読者層を想定してのこと。
写真(3点)
ロンプラ 1点 10ページのカラーページでみどころなど紹介。
ラフガイド 1点 40ページ弱のカラーページの一部でみどころなど紹介。
フットプリント 1点 50ページ弱のカラーページ(地図除く)でみどころなどを紹介。一部ホテルなどの宣伝になっている。実際に役に立つ写真は少ない。
歩き方 3点 いたるところに写真が使われている。その観光スポットに行く価値があるのか決めるのに大変役に立つ。
情報の鮮度(3点)
ロンプラ 2点 2年に1回更新。翻訳版はさらに1年程度タイムラグがある。
ラフガイド 2点 2−3年に1回更新
フットプリント 3点 毎年更新
歩き方 3点 毎年更新

小計: 歩き方 15点、ロンプラ: 11点、 フットプリント 9点、 ラフガイド 6点。

コメント

  • 目次,索引: ラフガイドと フットプリントの目次の使い勝手の悪さは異常。ポストイットが不可欠。
  • 構成: ロンプラ、歩き方はスタイルが近い。ラフガイドとフットプリントは慣れが必要。
  • 読みやすさ、文体: ロンプラの英語がシンプルなのはありがたい。 ラフガイドのちょっと捻った表現や、フットプリントの無駄のない文章は外国人には好みが分かれる。フットプリントは、使っているうちにだんだん好きになってきた。
  • 写真: 英語のガイドブックを中心に使っていても、不便を感じないのは、歩き方も持っているのから。逆に、ネットの旅行記などでイメージを既につかんでいる場合、歩き方の写真はそれほど重要ではない。
  • 情報の鮮度: 実際に使ってみて1-2年の更新頻度の差はほとんど感じられなかった。ラフガイド・フットプリントのようにホテルの料金をレンジで載せていると、値上がりに気づかない。歩き方のように間違った地図を長年載せている場合もある。入場料などの最新情報は役に立つかもしれない。
  • 結果: 特に欠点のない歩き方が満点の15点。ロンプラは11点と健闘。ロンプラは全体的に、使い勝手や情報の探しやすさをよく考えて作ってある。

ページ レイアウト例

  • ロンプラ - 本文は2列。見出しで細かく分ける。

  • ラフガイド - きれいな地図。2列の部分はホテル・レストランと・リスティング情報。

  • フットプリント  - 字は小さいが、どこかスタイリッシュなデザイン。


補足

  • ラフガイドとフットプリントは、その町への行き方、市内交通、観光案内所などの最低限の情報を最初のセクションにまとめて書いてある。一方、ロンプラは交通情報は最後に書かれている。

コア以外の情報

コア情報ではないが、旅行者に有益な情報。

採点

ネット/ATM(2点)、祭り/イベント(2点)、コース、コース/ アクティビティ(2点)、トレッキング情報(2点)、気候(1点)、見所の提案(1点)、外国語(1点)、危険情報(1点) 計12点。

ネットとATMの情報 (2点)
ロンプラ 2点 ほどんどの町でカバー。地図、料金に加え営業時間まで明記。紹介物件は必ず地図に載せる。
ラフガイド 2点 たいていの町をカバー。アイコンが大きく、地図上で見つけやすい。
フットプリント 2点 ラフガイドと同じ。
歩き方 0点 ページの端の部分か読者投稿に書いてある。地図に描かれていることもある。平均すれば載せていない町のほうが多い。
祭り、イベント紹介 (2 点)
ロンプラ 2点 トップ10フェスティバルを巻頭で紹介。全国的な祭りや祭日の一覧あり。章の始めにその州のフェスティバル一覧あり。
ラフガイド 1点 全国的な祭りや祭日の一覧あり。一部の章にその州のフェスティバル一覧あり。
フットプリント 2点 6ベストフェスティバルを巻頭で紹介。全国的な祭りや祭日の一覧あり。リスティングのところに町ごとの祭り情報あり。掲載数多し
歩き方 2点 全国的な祭りや祭日の一覧あり。地域の大きな祭りは開催地のところで紹介。
コース、アクティビティ (スポーツ、ヨガ、外国語、料理) (2点)
ロンプラ 2点 量、バリエーション共に充実。
ラフガイド 1点 情報少なめ。
フットプリント 1点 量はそこそこ。
歩き方 0点 限られた情報のみ。もともと長期滞在者を想定していない。
トレッキング情報 (2点)
ロンプラ 1点 一通りカバー。
ラフガイド 1点 欄外のコラムで大きくカバー。
フットプリント 2点 情報は詳細。マイナーなルートも載せている
歩き方 0点 さわりだけ。
旅の季節、気候 (1点)
ロンプラ 1点 主要都市の気温と降水量のグラフ一覧。 州ごとに旅のシーズンが書かれている。
ラフガイド 1点 主要都市の最高気温・降水量の一覧(カラー)
フットプリント 1点 主要都市の気温・降水量の一覧(カラー)。地域とベストシーズンのマトリックスあり。州や町のイントロ文章の中に気候やベストシーズン情報が散らばっている
歩き方 1点 主要都市の気温・降水量のグラフ一覧。ビーチや高地の場合、その都度シーズンを記載。
ルート、見所の提案 (1 点)
ロンプラ 1点 巻頭カラーでインドのハイライトを20紹介。州ごとにみどころを6,7箇所地図とページ番号つきで紹介。旅行ルートを10個提案。
ラフガイド 1点 巻頭カラーでインドのハイライトを41紹介。 州ごとにみどころを8箇所ほどページ番号つきで紹介。ルート提案なし。
フットプリント 1点 巻頭カラーで、祭りと城・遺跡のそれぞれトップ6を紹介。州ごとにみどころをページ番号つきで7つほど紹介。旅行ルートを9つ簡単に紹介。
歩き方 1点 巻頭特集で有名な観光地を2,3紹介。ルートを7つ提案。全体的に写真が多いので見所の判断は自分でもしやすい。
外国語 (1点)
ロンプラ 1点 食べ物関係3ページ。ヒンディ5ページ、タミル2ページ。単語8ページ
ラフガイド 1点 食べ物関係4ページ、ヒンディ2ページ、単語7ページ
フットプリント 1点 ヒンディ3ぺージ。単語11ページ
歩き方 0点 さわりだけ
危険情報 (1点)
ロンプラ 1点 デリーのところと、巻末の危険情報のところで詳しく説明。幅広くカバー。
ラフガイド 1点 デリーの場合、コラムでよくある騙しの手口を紹介。
フットプリント 0点 全体的にこういう泥臭い情報は載せない傾向あり。
歩き方 1点 被害者が多いこともあり情報充実。旅のトラブルとデリーのセクションの読者投稿で紹介。

小計: ロンプラ: 11点、フットプリント: 10点、ラフガイド: 9点、 歩き方 5点

コメント

  • ネットとATM: 海外勢はATM情報が豊富。次の町にATMがあるかどうか前もってチェックできる。
  • コース、アクティビティ: 長期滞在向きの町では有用。
  • トレッキング情報: 海外ガイドブックはこの分野に強く、ページをたくさん割いている。
  • 情報量で歩き方が劣勢。他は大差なし。

補足

  • マナリーからソランへのトレッキングについて具体的な情報を載せているのはフットプリントだけ。
  • インド旅行中によく遭遇する単語、MG MargのMargって、Laxmi NiwasのNiwasって。ホテル名や地名などで何度も聞くけど意味をしらない単語たくさんあります。3誌ともそれらの単語をグローサリーというくくりで大量に掲載しています。

その他の情報

その他もろもろの情報。採点なし。

表紙
ロンプラ N/A タージマハール
ラフガイド N/A バラナシ、ダシャシュワメドガートの沐浴風景
フットプリント N/A チャイニーズフィッシングネット (おそらくフォート・コーチン)
歩き方 N/A どっかの遺跡
筆者
ロンプラ N/A 12人のメンバーが分野や地域を分担して取材。トータル252日の現地リサーチ
ラフガイド N/A 6人のメンバーで取材。だれが何を担当したかは明記されていない。
フットプリント N/A 最新版の取材を2人で行ったらしい。
歩き方 N/A 旅行ライターの前原利行氏を筆頭に6人の男性で取材と写真を担当。改訂にあたり、実際に現地取材をした人数は不明。
読者投稿
ロンプラ N/A 投稿情報がそのまま本文に載ることはないが、本の最後に情報提供した人の一覧あり。 インターネットで活発 なBBSあり。
ラフガイド N/A ロンプラと基本的に同じ。ただ載っている名前の数少なめ。
フットプリント N/A 読者の名前が本に載ることはない。
歩き方 N/A ページの下のはみ出し情報やホテル・レストランの推薦文に本名またはペンネームで載ることができる。同じ人が多数載っているところを見ると敷居は低そうだ。こんな適当な情報載せていいの?という不正確な情報も時々ある。 ネットで活発なBBSあり。
広告
ロンプラ N/A 全くなし。
ラフガイド N/A 巻末に少しだけ。
フットプリント N/A 巻末に少しだけ。
歩き方 N/A 巻末に少しだけ。
キャッチフレーズ
ロンプラ N/A Almost too much information
ラフガイド N/A The clearest map of any guide
フットプリント N/A Sets the pace for the rest to follow
歩き方 N/A 地球を歩き続けて26年

補足

  • 歩き方は、ここ数年、取材メンバーや編集プロはあまりかわっていないようだ。しかし2007-8版のほうが2004年版より安宿重視の方向になっている。
  • 1985年当時の歩き方を見てみると、町の紹介文と地図が最新のものとほとんど同じだったりする。
  • 前原さんは、旅行人のインド黄金街道の筆者でもあるので、意外にも旅行人と歩き方の情報ソースが同じということにな る。


















採点結果と総評

採点結果

点数 ロンプラ ラフガイド フットプリント 歩き方
紙質、携帯性 5点 2 2 3 5
カバー範囲、観光地情報 10点 8 8 9 4
地図 8点 3 7 7 5
交通 8点 8 5 6 4
宿、食事、買物 10点 10 7 6 5
使い勝手 15点 11 6 9 15
コア以外の情報 12点 11 9 10 5
合計 68点 53 44 50 43
順位 1 位 3 位 2 位 4 位

合計: ロンプラ: 53点、フットプリント: 50点、ラフガイド: 44点、 歩き方 43点

ロンプラが1位、僅差でフットプリント、少し離れてラフガイドと歩き方、という順位になった。 この結果は私の実際の感覚 にかなり近い。 個人の嗜好や点数の配分で順位は変わってしまうので、あくまで参考ということで。

総評

結果
ロンプラ 53点 その使い勝手のよさと情報量で、地図のマイナス点を十分カバーしている。 英語ガイド3冊のうちどれか一冊選ぶとすれば、やはりロンプラになる
ラフガイド 44点 「地図のよくできたロンプラ」として期待していたのだが、地図と歴史以外はロンプラに勝るものはなく、いまひとつ。ラフガイドだけに載っている面白い情報があったかと思うとガセだったりする。よく調べている街とそうでない街がはっきりしている。 なぜか乗り物系コラムが充実。
フットプリント 50点 独自路線を行く辞書のようなガイドブック。多くの点で洗練されている。文章はよくまとまっている反面、素っ気無く好みが分かれる。 情報量はロンプラに負けじと多い。インテリ向け。
歩き方 43点 カバーしている街の数、掲載ホテル数が少なすぎて、長期旅行者のニーズに答えていない。もう200ページほど欲しい所だが、日本人旅行者が少ない昨今無理な話。やはり、ロンプラ + 歩き方の組み合わせがベストだろう。

最後に

進化し続けるガイドブック

ただでさえ分厚い英語ガイドブックが、改訂を経るごとにさらにページ数を増しているのをご存知だろうか。 ロンプラの場合、1088ページ(2003)-> 1140ページ(2005) -> 1236ページ(2007)となっている。 お隣韓国には、歩き方の翻訳版の他にIndia 100(だったかな。失念)というガイドブックがある。初期の歩き方のような感じのバックパッカー向けのガイドブックで掲載ホテルも安宿が中心。この本、最初はサイズもレイアウトも歩き方そっくりだったのだが、最新版を見ると、デザインを大きく変更し、インド版のペー ジ数も、ネパール部分(89ページ)を含めて1142ページに大幅に増えている。文字サイズの違いや写真の量もあり一概にはいえないが、歩き方は、他国のガイドブックの約半分の情報量ということになる。インドという大国を旅するのに500ページではあまりに少なすぎる。 積み上げられたガイドブックを見ながら、そんなことを思う今日このごろです。

補足

  • 歩き方も昔はインド編にネパールを含んでいた。
Copyright (C) 2009 Sekakoh. All Rights Reserved.
inserted by FC2 system