秘湯キルガンガへトレッキング


パルバティ川上流の山奥に絶景の露天風呂があるという。その名はキルガンガ。噂の秘湯を求めてトレッキングを決行した。



旅行時期: 2009年4月前半
為替: 1ルピー = 1.98円
作成日: 2009.06.02

目次


イントロ

4月上旬、温泉場マニカランで湯治に 励むと同時に、この地方のトレッキング情報を収集していた。いろいろコースがあるのだが、まだ雪で峠が越えられないところが多く、本格的なトレッキングはできない。それでは日帰りの山村めぐりはどうかと考えてみた。マニカランがあるパルバティ渓谷は、小さな山村、いわゆるヒッピーリゾートが点在している。その中には道路が通じていないところも多い。その究極が、マニカランから24km川を上ったところにあるキルガンガ(Khir Ganga, 標高2650m)だ。パルバティ渓谷最後の村で、シバ神が瞑想したとされる温泉がある。 そこの露天風呂からの眺めがすばらしい、とのことなので、自称温泉フリークの私は、それを確かめにキルガンガへ向かった。

トレッキング(往路)

 

まずは始発のバスで15km先のバルシャイニーの町に向かう。バルシャィニー(Barshaini)はバスや車で行ける最後の町。すぐ下でダム工事が行わ れており、ダム手前の橋を渡った対岸の丘には、プルガ(Pulga)、トゥルガ(Tulga)、カルガ(Kalga)の山村トリオが確認できる。地図はないに等しいので、地元の人に聞きながら道を探していく。 手前の橋には降りず、まっすぐ進み、ダムの裏側に回る。 そこでは、2つの川が合流しており、1つ目の川に小さい木の橋が架かっているので、そこまで降りて渡る。 

 

渡った川は支流で、キルガンガへの道は本流沿いにある。目の前の丘を登り、丘の裏側へ続く道へと向かう。 ここからはしばらく一本道。ほとんどアップダウンがなく歩きやすい。途中、ラクタール?の村を過ぎ、さらに歩くと右下に橋が見えてくる。この橋を無視して進むと、滝と小屋がある広場に出る。ここまで1時間40分。ここはちょうどいい休憩ポイント。広場のすぐ先に川に向かう細い小道があるので、そこを下りると、また別の橋が あるのでそれを渡る。

写真: 上:ダムの裏。右側の川が本流。 下: 滝の後の橋。ここから登り。

ここからキルガンガまでは一本道。パルバティの激流を下に見ながら歩き続ける。最初は登りが続き、その後、アップダウンのある山道を進むと、最後にキルガンガのある草原の丘に出る。小屋やテントの見える丘の上まで登り到着。滝からここまで1時間20分。バルシャィニーから計3時間。 温泉と小さな寺院は丘をもう少し登ったところにある。


写真: 左:キルガンガの丘。 右: テントレストラン

キルガンガへのアクセス

  • バルシャィニーまでバスかタクシー。
  • マニカランからバス: 15ルピー, 40分 始発 7:45AMくらい。
  • タクシー: 300ルピー
  • その後トレッキング。

トレッキング情報

所要時間:

  • Barshainiー -> Khir Ganga: 3-4.5時間
  • Khir Ganga -> Barshani: 2-3時間
  • Khir Ganga -> Karga: 3-4.5時間
  • Karga -> Barshaini 30min

地図:

温泉チェック



早速、温泉をチェックしてみる。 湯船は男性用露天風呂が1つ。その隣の小屋が女性用。女性が露天風呂に入るのは禁止されており、夜間の入浴もだめ(それぞれ罰金500ルピー)。 正午前後に入浴してみたが、ぬるい! お湯が出てくるパイプの下でやっと適温。ただ、景色は悪くない。正面に切り立った山があり、さえぎるものは何もない。山奥のひとけのない温泉、聞こえるのはカラスの鳴き声だけ。曇り空ということもあり、私の勝手な印象は“おば捨て山へ向かう途中の最後の村”。


写真: 上: 露天風呂からの眺め。目の前は山。 湯船には湯の花が浮いている。
   下: 露天風呂の隣の小屋が女性用。男性用湯船のすぐ下に洗い場がある。

宿、レストラン

風呂から上がり、下の集落に戻る。キルガンガはパルバティ川最後の村と聞いていたが、村といってもちゃんとした建物はゲストハウスが一軒あるだけ。あとは、訪問客を見込んだテント・レストランが3,4軒。定住者はいないようだ。 レストラン街の上に、アシュラムという名のゲストハウスがある。 山小屋風で雰囲気は悪くないが、部屋に電気がないので夜はロウソク。タンドリー(薪ストーブ)付とそうでない部屋がある。

お腹がすいたので、レストランに入ってみる。テントの中は広く、奥にはストーブと足を伸ばせる座敷がある。各テントにはミニ・ソーラーパネルが設置されているので、電気はあるようだ。メニューは、他の町のツーリスト用レストランと変わりなく、インディアン、中華、イタリアン、イスラエル料理など一通りそろっている。なぜかオムライスも発見。山奥の割には値段はリーズナブルで、割高なのは輸送コストがかかるコーラなどの飲み物くらい。


写真: 左: ゲストハウス。同じような小屋が3棟。 右:テント・レストラン内部

補足

Ashram:

タンドリーあり: 200ルピー

タンドリーなし:  150ルピー

薪代: 一晩50ルピー


タンドリー付の部屋


レストラン値段

  • Chai: 10
  • Cola: 25 (ボトル)
  • Veg. Chowmain: 60
  • Tomato Soup: 30
  • Om Rice: 50

トレッキング(帰路、前半)

チャイを飲みながら今朝のトレッキングを思い返してみる。 いくつか、解せないことがある。 キルガンガ・トレックの拠点はパルガ村のはずだが、村を経由せずに直接来てしまった。また、キルガンガ訪問者の旅行記などを読むと、切り立った崖の上の細い道を歩く、など道が険しいことが書かれているが、全然余裕だった。特に滝の休憩ポイントまでの道はよく整備されていて歩きやすい。 どうも別のルートもあるようだ。 店主に確認したところ、私の推測通り、カルガやパルガに向かう道があることがわかった。帰りは、その道を通って帰ることにしよう。

1時45分ごろレストランを出発。40分位歩いたところで、沢の近くに茶屋の廃墟のような建物が2つ見えてくる。その2つ目の茶屋のすぐ後に、上へと向かう細い道が見えてくる。これがカルガ方面への道だ。カルガ直通ルートは、周りに木が多いので森の中を歩いているようで気持ちいい。 その一方、朝来た道ほど、道が整備されていないため、歩きにくい。小川に掛かる丸太の橋を超えた後が特に険しく、急な下りや道を外れると川へまっ逆さまな細い道などがしばらく続く。ここで命を落とした若者もいるらしく、注意を促す看板も設置されている。おそらく旅行記はこの辺りの道のことを言っているのだろう。それでも注意して歩けば問題ないレベル。


写真: 左: カルガへの分岐の近くの岩。この裏に1つ目の茶屋(廃墟)がある。右: 崖っぷちの道と滝。

トレッキング (帰路、後半)

このルートからは、朝通った道が確認できる。まず、滝のある休憩ポイントが山の下に見えてくる。橋までは同じ山を歩くのだが、カルガ・ルートのほうが高い位置を歩くのだ。 カルガ直通ルートは川を渡らず、そのまま山腹を歩き続ける。 その後、対岸の山に、朝歩いた道やラクタール村?を見ながら歩き続ける。こちらの道はアップダウンが多く足場も悪いため、向こうの真っ直ぐに伸びた道を見るとちょっとうらやましく感じる。4時過ぎにカルガ村に到着。ここまで2時間半。

左: 朝通ったラクタール村が見える。 右:途中出会ったヤギ飼いのおじさん。キノコの束を煎じて飲むよう勧めて来た。

カルガでは、農村の中にゲストハウスが点在している。てっきり、カルガ、トゥルガ、プルガの3つの村は繋がっていると思っていたが、他の村へ行くには、一旦丘を下りて橋を渡り、再び次の村まで登らなければならない。今回、パルガ村まで足を延ばす時間はない。雨が降ってきたのでカルガ村のゲストハウスでお茶をする。気がつくと、5時の最終バスまであまり時間がない。急いでダム手前の橋まで下り、バルシャィニーのバス停まで駆け足で登った。普通に歩けば30分はかかりそうだ。なんとかバスに間に合い、日帰りキルガンガ・トレッキングは無事に終了した。

写真: 左:  カルガに到着。 右:ゲストハウスの座敷風レストラン。

プルガ、トゥルガ、カルガ

後日、十分回れなかった3村を訪問してみた。これらの村はカソールに次ぐヒッピーに人気の村で、プルガが村の規模が一番大きく、老舗的存在。カルガはプルガよりアクセスがいいため、近年ゲストハウスが増えている。真ん中のトゥルガにゲストハウスはないが、民家を貸す人がいるらしい。これらの村以外にも、バルシャィニー側の山を奥に進んだところにトッシュ(Tosh)という村もある。 どれもちいさな農村の集落に過ぎず、ドラッグやトランス音楽を楽しむヒッピー旅行者でない限り、行ってもそのしょぼさにがっかりするだけだろう。 

バルシャィニーのバス停からプルガは川を越えて目の前なのだが、橋のあるダムまで500mほど歩き、そこからプルガまでの山道を登っていかなくてはならない。普通に歩くと40分くらいかかる。荷物の大きい人はポーターを雇うこともできる。 他にもバルシャィニーよりかなり手前でバスを降りて、他の村を通りプルガまで歩くルートもあるが、村の人が終点までバスに乗っているところを見ると、ダム経由の道のほうが楽なのだろう。

カルガの場合、橋を渡った丘の上にあるので、そのまま道を登れば到着する。トゥルガは、プルガへ向かう途中にある川の脇の道を登ったところにある。 プルガ・トゥルガからカルガへ行く道は2つあり、一度ダムの近くまで下りる道と、丘の山腹に沿って進み、小さな橋を超えた後、カルガまで一気に上るルートがある。前者がわかりやすく、後者はトレッキング向き。

 3村の印象だが、私はヒッピー旅行者ではないので、「静かな農村だなー」程度にしか感じなかった。それぞれ丘の上にあるため、景色は悪くない。プルガは少し擦れた感じがしたので、泊まるならカルガがよさそうだ。トゥルガはチャイ屋さえなく、他の2村ほどツーリスティックではない。 この日は天気もよく、そよ風が心地よい。こういう日にキルガンガに行っていたら180度違った印象を持ったのかもしれない。"天国の温泉"とか。

写真: 上: 川を越えた丘の上にあるプルガの村。ちょうどバス停の正面に見える。 下: プルガの風景
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