バックウォーターを攻略 LocalBoat編

ケララ州のバックウォータークルージング - いわずと知れた南インド観光の目玉の一つである。アレッピー-コーラム間をルーフ付の観光用ボートで8時間かけて移動する。乗客は全員観光客だ。それと対照的なのが、地元住民向けのローカル路線ボート。道路のない水郷地帯の集落を縫うように進んでいく。興味を覚えた私は、ローカル線試乗の旅に出ることにした。


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地域: インド - 南インド
ジャンル:  船旅小旅行

旅行時期: 2009年2月前半
為替: 1ルピー = 1.85円
作成日: 2009.10.01

目次


ローカルボート

観光用ボートが大きな水路を一直線に運行するのに対し、ローカル路線ボートは両岸の船着場に寄りながら、ジグザグに進んでいく。また、住民の多い細い水路を通る場合が多い。

写真: 左: アレッピーの船乗り場 右: ベナトゥカドゥに立ち寄るローカル船。

観光船と違い、ローカル線はぼろくてでかい。エンジンは客席の真ん中あたりにむき出しで配置されており、非常にうるさい。また観光用でないため、船によっては前部に操縦席があり、前の景色が見えない場合もある。両サイドには窓がなく、雨/水よけシートがぶら下がっている。座席は硬く乗り心地は決してよくない。そして、乗り合いのため座れる保証はない。

写真: 左: 正面に窓があるタイプ(コタヤム線)。 右:正面が運転席のタイプ(ドミティ-エダトゥア間の船)
 

地図

 ローカル船を攻略する場合、水路の地図が不可欠である。水路のネットワーク情報がないと、どのルートが可能なのか、今どこを走っているのかさえわからない。時々大きな分岐に標識が建っているが、それだけでは不十分だ。

幸いにもアレッピー滞在中、良質の水路図に出会うことができた。DTPCが顧客にバックウォーターを説明するときに使う地図(Kerala Backwaters Map)である。これは一般に配布されていない地図で、責任者に頼み込んで一枚もらうことができた。この地図にはコーチンからコーラムまで、大小すべての水路と湖が省略せずに書かれている。さらに赤い点線でメジャーなクルージング・ルートも紹介されてている。最強の地図を手に入れ、さっそくルートの研究にとりかかることにした。

写真: 上: 水路の標識。右に行けばコーラム、左に行けばコタヤム。下: 今回使用した地図。


まず、アレッピー周辺の水路を見てみる。アレッピーなど海沿いの町とコタヤムなどの内陸の町とは2、30キロ程度離れており、その間が水郷地帯になっている。それらの町は道路だけでなく、水路でも繋がっている。途中、水郷地帯の小さな集落を経由しながら東西に移動できそうだ。ただ、実際にそのルートに乗り合いボートが出ているかどうかは別問題。この地図にはアイコン表示で T = Temple, M = Mosque, C = Churchと寺院や教会の場所が示してあり、水路沿いにもいろいろ見所がありそうだ。

写真: 水路沿いの教会

コタヤム線


地図: 肌色-赤色の線がコタヤム線。より大きな地図で Alleppey local boat routes を表示

まずはくみし易いコタヤム線(Kottayam)から。ロンプラ他海外ガイドブックに紹介されている定番ルートで、一日5便のコタヤム行きの便は必ず1,2組の欧米人が見かけられる。この路線は東北方面にあるコタヤムまで一直線に進むシンプルなルvート。宿にほど近いアレッピーの船乗り場に行き、窓際の席を確実にゲットする。船は定時に出発し、Vembanad湖を横断した後、埋立てた水田の間の大きな水路を走っていく。前半はココナッツ並木と水田を両側に見ながらの単調なクルーズ。埋立地を抜けると、水路が狭くなり、両側に家が見え始める。この運河は住民には欠かせないインフラで、水辺の階段に頻繁に下りては、皿洗い、洗濯、沐浴など水回りの家事をこなしていく。40分程狭い水路を走り、コタヤムの船着場に到着した。合計2時間半の船旅は、正直単調でいまいちだった。


写真: 左: 水路の両側に椰子の木が並ぶ。右: 水路が狭くなると、両側に民家が並ぶ。

コタヤム行き

  • アレッピー発: 2時間半
    7:30, 9:30, 11:30, 2:30, 5:30
  • コタヤム発: 2時間半 
    7:00, 11:30,1:00, 3:30,5:15
  • コタヤムの船着場は町のはずれなので帰りの便まで1,2時間することがない。2:30PMの便で行けば待ち時間は15分ですむ。

サーキットに挑戦


地図: 肌色-青色の線がネドミティ、チャムバクラムを経てエダトゥアへ。紫の線がチャンガナシェリーからアレッピーへ戻る路線。水色がエダトゥアからニーレトゥプラムを経てキダンガラへ行く路線(運休の模様)。
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DTPCがツーリスト向けに情報を持っているのはコーラム線のみ。これ以外の路線は自分でルートと時刻を調べなければならない。しかし困ったことにアレッピーの船着場には時刻表がない。スタッフに行き先を言えば次の出発時刻を教えてもらえるが、そもそのどういう路線があるのかわからない。時刻表を見て行き先を決めるようなこともできない。また、アレッピーのスタッフは他の町からの発着スケジュールや路線に関して知識がない。そんな不自由の中、私が次に企画したのが、ローカル線を乗り継いで水郷地帯を一周するルートだ。

ラフガイド(2008)によると、チャムバクラム(Chambakulam)、エダトゥア(Edathua)、ニーレトゥプラム(Neeretthupram)、キンダンガラ(Kidangara)を乗り継いでアレッピーに帰ってくることが可能らしい。前回のコタヤム線の単純往復よりは面白そうだ。現地の時刻表も分からぬまま、見切り発車で出発してみた。アレッピー -> ネドゥムディ(Nedumudi) - (チャンバクラム 通過)-> エダトゥアと順調に乗り継いだが、これより先は現在船が運航されていないことが判明。サーキットはあっけなく失敗した。くやしいので、オートリキシャでチャンガナシェリー(Changanassery)まで移動し、残り半分のサーキットを続けることにした。チャンガナシェリーは大きな町だが、需要がないのか一日3便しか船がない。そのうち朝夕に一本ずつアレッピー行きがある。4:45PMの便に乗ったが後半は真っ暗だった。一応オープンジョースタイルの周遊は完成したものの、ここも大きい水路を中心に走るので、景色はコタヤム線と大差ない。

写真: 上: 大きな水路に出る前は狭い水路を東に進む。下: チャンガナシェリーの船着場の売店。無人駅なので、時刻表はこの店のオヤジに聞くしかない

 

サーキット路線

  • アレッピー -> ネドゥムディ: 本数多い。
  • ネドミティ -> エダトゥア: 何本かある。
  • アレッピー -> チャムバクラム:何本かある。
  • チャンガナシェリー -> アレッピー: 2本。
    9:30AM -> 12:30PM
    4:45PM -> 7:30PM

カヤルプラム線


地図: 肌色-黄色の線がカヤルプラム路線。より大きな地図で [India] Alleppey local boat routes を表示

定番路線もサーキット路線もいまひとつだった。手詰まりになった私は、自分の知らないルートを求めてたまたま出発間近だったボートに飛び乗ってみた。そのボートは、カヤルプラム(Kayalpuram)行きのボート(2:45発、船番号A17)で、これが予想外によかった。このボートはチャムバクラム行きと違い、すぐに大きな水路に入らず、細い水路をつないで西から東に進んでいく。民家のすぐそばを進んで行き、生活感が感じられる。後で聞いて見ると、ベナトゥカドゥ(Venattukadu) 経由の船はこのルートを通るらしい。途中、学校(St. Mary)の下校時間と重なり、船内は大混雑。水郷地帯に住む子供は、やはり水郷地帯にある学校にボートで通うのだった。 しばらくすると船は民家もまばらな水田地帯に入っていく。まわりは田んぼ以外何もなし。水鳥ものどかに泳いでいる。2時間半以上かけて終点のカヤルプラム(5:30PM)に到着した。


写真: 左: 日が沈み始める。椰子の木のシルエットが映える。 右: 水田地帯のど真ん中で、水鳥も元気。

こんな辺鄙なところにも学校と教会があり、この船を待っていたと思われる小学生が沢山乗り込んできた。同じ船で折り返しアレッピーに戻る。さきの小学生は途中で降り、手こぎのボートに乗り換えて各自家路に向かう。こんな田んぼのど真ん中に住む生活ってどんなものだろうか。帰りのルートは行きとは違い、ネドゥムディ経由でアレッピーに向かう。遠回りなうえ、大きな運河を通る。すぐに日が暮れ、暗闇の中を走り続ける。いいかげん飽きてきた頃、船はアレッピーに到着した(8:30PM)。今回試した中では、このルートが一番良かった。ただし、良かったのは前半部分だけで、往復6時間の長旅である。


写真: 左:カヤルプラムで乗船待ちの小学生軍団。右: 小型ボートに乗り換えて帰宅。

カヤルプラム線

  • アレッピー -> カヤルプラム
    2:45PM -> 5:30PM (1日1本)
  • 前半はベナトゥカドゥ経由の路線と同じ。

まとめ

GMAPで路線を再現してみたが、あまり自信がない。いくつかの路線は、要領をつかむ前に乗ってしまったのでメモも取っていない。うるさくて鈍いローカルボートはさして魅力的なものではないが、A17のボートのような名もない路線が期待以上の活躍をすることもある。ローカルボートにわずかながらポテンシャルを感じた次第だ。

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