カルカーシムラ鉄道を攻略インド・シムラに来たからには乗ってみたい世界遺産トイトレイン。一日5便ある列車のどの客車に乗るべきか迷うのであった。 写真: 走行中、たまたま居合わせた犬に蹴りをいれる青年 |
旅行時期: 2009年4月前半
為替: 1ルピー = 1.98円 作成日: 2009.06.09 目次 |
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イントロダージリン、ニルギリに続き、2008年7月、世界遺産「インド山岳鉄道群」に登録されたカルカーシムラ鉄道。762mmのナローゲージ、20駅、102個のトンネル(#46は欠番)、800以上の橋、900を超えるカーブを経て96kmの距離を約5時間で走りぬける。1日5本の列車が走っており、2本は観光客向け。残り3本は通常の列車。連結している客車の等級もバラバラ。どの列車に二等車があるのかもはっきりしない。まずはシムラ駅へ行き各列車の特徴をチェックしてみることにした。その前に軽くシムラの紹介。 |
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シムラ紹介ヒマチャル州の州都。標高2075m。かつては夏期の首都として機能していたこともあり、植民地時代のレガシーが至る所に感じられる。斜面の南側に町が形成され、観光スポットは山の稜線沿いにある。インド有数の避暑地で5月-6月のシーズンは大変混雑する。デリーからのアクセスはバスが一番便利だが、カルカとの間を走るトイトレインも根強い人気がある。 写真: 左: シムラの街。 右: 稜線の広場(The Ridge)にあるChist Church |
駅一覧
補足注意
インド鉄道の客車の等級コードFC = ファーストクラス。個室風になっている。 CC = (通常)エアコン付のゆったりした座席。 II = 二等車。予約不要の硬いベンチシート。 2S = 座席指定の二等車。 増便観光シーズンにはShimla-Kalka Expressが2便増便されるらしい。ERAILに出てこないので、シーズンとはいつなのか、週末だけなのか。この辺りは不明。シムラ駅に張ってある時刻表によると、
しかし、他の定期便の時刻がすでに間違っているのであまりあてにできない。 |
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列車の種類列車のスケジュール、運賃、停車駅、停車時間、予約可能な客車、空席状況、外国人枠/TATKAL枠など、必要な情報はすべてERAILでチェックできる。車両の編成や車内の設備は直接列車を見て確認するしかない。 現在、5本の列車が毎日運行されている。それぞれのスケジュールと特徴をまとめてみた。
写真: 左: レイルカー、 右: Shivalik Express |
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クラスと客車設備それぞれの列車には、等級・種類の異なる車両が連結されている。こちらも重要なのでまとめてみた。同じクラスの車両でも、 列車が違うと料金や設備も変わってくる。
4 月の時点で、CC/FCを含めエアコン付きの車両は1つもなし(のように見える)。何か損した気分だが、この路線の楽しみは森の涼しい空気を楽しむことにあるので気にしない。シバリック特急とレイルカーは座席が2x1だが、一人席が左右どちら側に来るのかは客車次第。 |
特別な客車 通常の客車の他に、ハネムーン層を狙ったShivalik Queen、と豪華客車のShivalik Palaceなどがある。これらは前もって予約があったときのみ、既存の列車に連結される。駅で直接予約。料金情報は少し古いかもしれない。 Shivalik Queen790ルピー/カップル ハネムーン用の客車。1車両に4カップル。計8人乗れる。大きな窓、食事つき。 Shivalik Palace4790 ルピー/up, 3495ルピー/down リビングルームのような客車。6人まで乗れる。ソファー、クッション・ベッド、キッチン、冷蔵庫、テーブル付き。シムラ駅 のリタイヤリング・ルームが2部屋無料で使える。食事つき。 Shivalik Coach??これはよくわからない。 |
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貸切料金
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機関 | 客車と値段 |
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蒸気機関 | ファーストクラス2輌に二等車一輌: 片道 28000 往復 59000 |
ディーゼル | ファーストクラス2輌に二等車一輌: 片道 35000 往復 74000 |
1ルピー2円とすると、蒸気機関車の貸切が片道5万6千円になる。また、シムラ駅待合室の案内看板によると、レイルカーの貸切もできる。一人247ルピーで最低6人から。6人乗って1482ルピー(約3000円)ということになる。シムラーカルカの乗り合いタクシーの料金が一人300ルピー(600円)なので、6人集まればレイルカーをチャーターしたほうが安い。もちろん、実際には30日前までの予約などいろいろ決まりがあると思いますが。
この路線のダイヤは非対称で、カルカ発は早朝出発して、午前中にシムラに到着するのが大半。一方、シムラ発は、夕方に出発するものが多い。景色が見える日中に乗るのほうがいいので、シムラ発はカルカ発ほど混まない。座席指定の客車はすべてIRCTCのウェブサイトから予約できる。 シバリック特急とヒマラヤン・クイーンのCCクラスにわずかながら外国人観光客枠がある。予約不要の二等車は、シバリック特急とレールカー以外の列車に2,3輌連結されている。
眺めのいい山腹をゆっくり走る(制限速度25km)。線路は針葉樹に囲まれ、空気も冷たく爽やか。単線のため、逆方向の列車待ちで、10分以上停車することもある。そのような駅では、売店が設置されているため、チャイでも飲みながら出発を待つ。いまだにニールズ・トークン・システムを使って単線管理しており、対向列車が通り過ぎた後に、駅の職員が列車の運転手に大きなワッカのようなトークンを渡す姿が見られる。これを持ってないと先の区間へ進めない。
大小800以上の橋がある。ほどんどはギャップを埋めるだけの小さなブリッジだが、立派な物もある。鉄橋ではなく、石のアーチを重ねたものが多い。 注目は、#493(カノー - カンダガート間 3層), #541 (カノー駅のすぐ後。カルカ側 3層), #226(ダラムプールーソンワラ間 5層)といわれている。また、100を超えるトンネルもあり、最長はバロン駅近くの約1キロのもの。トンネルや橋には番号が振ってありるので特定できる。
肩にかけたトークンリングと業務日誌のようなものを運転手に手渡す。
実際に乗ってみた。シムラ発で、暗くなる前にカルカに到着するのはHimalayan Queenだけなので、これに決まり。前日時点での予約状況ではWL(ウェイトリスト)に結構な人数いたので、予約のいらない二等車に乗ることにした。出発時間は10時半だが、9時前には既に入線していた。二等車は、先頭と最後尾に一輌ずつある。 写真の撮りやすい最後尾の窓際に席を確保し、窓口でチケットを購入した。
シムラ駅を出発
(10:30)すると、すぐにトンネル(#103)
をくぐり山の逆側に出る。ここからTeraDevi駅まで45分ほど山の右側の斜面を走るため、右側の景色がいい。TeraDevi駅(11:25)の後、左側にシムラの町が遠くに見えてくる。シムラからここまで山の裏側をぐるっと走ってきたことになる。Kathleeghat駅(12:00)から先はほとんど山の左側を走るので、長距離乗るのであれば席は左側がいい。
(カルカ発の場合は逆)。
写真: シムラ(画像中央少し左の稜線のあたり)
窓から顔を出して森の空気と眺めを楽しむ。ブリッジ、カーブ、トンネルのコンビネーションを何度も繰り返して列車は走り続ける。山の高い部分を走るため、眼下の眺めはいい。雪山のようなわかりやすい景色があるわけでもなく、農村など人々の生活が間近に見られるわけでもない。ただ、山や森を見ながらのんびり列車は進む。出発から3時間後、ソランの町が見えてきた。初めての踏切を通過し、ソラン駅(13:25)に到着。すぐ後のトンネルを過ぎたあたりから、ソランが大きな町であることが確認できる。
写真: こんな感じの橋とカーブが沢山ある。15分後(13:40)
に中間地点のバログ駅に到着。食事付きのクラスに乗っていれば、ここで食事が積み込まれる。停車が長かったので駅の売店に向かう。この時気づいたが、5輌あるCC車のうち、2輌は結構すいている。10人以上ウェイティング・リストにいたはずだが、この辺の仕組みはよくわからない。車掌に言えばアップグレードも可能だろうが、それも面倒なので残り半分も二等車でがんばることにした。バログ駅のすぐ後、長さ1143m のバログ・トンネル(#33)に入る。
写真: 路線最長のバログトンネル。
トンネル通過のすぐ後、停車駅でないkumarhatti駅付近でトークン交換を目撃。トークン交換は頻繁にあるのだが、自分の席から見えることは稀だし、手渡しの瞬間は一瞬なのでなかなかお目にかかれない。この辺りから、途中で乗り込んできた乗客と話をするようになる。ソランに出張に来ていたセールスマンで、会話は弾んだ。しかし、トンネルがあまりに多いためお互いよく聞き取れない。トンネルに入ると黙り、出ると会話を再開する。これを何度も繰り返した。
写真: トークン交換
ダランプール駅(14:30)を過ぎると、山をジグザグやループで下り始めた。 そこから一時間ほどすると、山の向こうに平野部が見えてくる。これまで山しかなかったので、なぜか気分が高まる。ゴールは近い。Gumman 駅(15:45)通過後、再びループを経て山を下る。最後に掘っ立て小屋の並ぶ丘を越えて16:20にカルカ駅に到着。予定より15分遅れただけだった。カルカ駅では、駅の構内で広軌の列車に乗り換えることができる。
カルカは標高656メートル。2075mのシムラより1419mも低く、暑い。 特にやることもないので、涼しいシムラに帰ることにする。カルカはパンジャビ州都のチャンディガールとヒマチャル州都のシムラを結ぶ幹線ルート上にあり、一時間に4,5本バスが通過する。やってきたバスに乗り、3時間後にシムラに到着。
6時間近くも二等車の硬いシートに座ったのでさすがに疲れた。初めてなので最後まで乗ったが、途中からバスで戻ることも可能だ。列車と幹線道路は同じようなルートを走っており、駅のすぐ近くにバス停がある所もある。自分が気づいたところでは、 Kathleeghat、Kandaghat、Dharmpurなどがよさそうだ。ソランにも近くにバス停があるらしい。
Kandaghat駅すぐ下のバス停
これだけ客車にバリエーションがあるのに、二等車に乗った。結局、好きな時に好きな席に座れる自由を選択したのだ。普段の嗜好は簡単には変えられない。それでも楽しめたカルカーシムラ鉄道。今回のリサーチは決して無駄ではなかった。