日帰りアンナプルナ - ラカポシB.C.

情報ノートで絶賛されているのがラカポシB.C.へのトレッキング。「ウルタル行くくらいならラカポシへ行け」とある旅行者は強く勧める。少し思い当たる節がある。ウルタルB.C.では、周りの山の残雪が少なく迫力不足だった。一方、ラカポシやディランなど、南側に見える山々は、まだまだ雪をたっぷり被っている。朝日に輝くラカポシ(7788m)を見る度に、ラカポシB.Cへの思いは募るばかりだった。



旅行時期: 2009年10月前半
為替: 1ルピー = 1.07円
作成日: 2010.02.10

目次


日帰り計画

シーズン中(7月-9月初旬?)は、簡易食堂やテント・寝袋の貸し出しなどもあり、手ぶらでB.C.に行き宿泊することができる。しかし、シーズンは既に終わり、テント持参でも少し寒い季節に差しかかっている。半ば、諦めていたのだが、情報ノートによると、頑張れば日帰り可能で、登り5時間、下り3時間が目安だという。一筋の光を見た私は、日帰りトレックに挑戦してみることにした。

補足

ミナピン村への道

朝起きて、天気がいいのを確認してから出発。登山口のあるミナピン村(Minapin、2012m)は、カリマバードから西に2-30kmほど離れている。カリマバードからギルギット行きワゴンが朝一本出ているので、それに乗り込み7:30頃出発。アーリアバードを過ぎた辺りから、ラカポシの山が左側に大きく迫ってくる。ラカポシは、K2やエベレストと違い、その辺の町からでもよく見えるのだ。今のところ、雲一つなくいい天気だ。

50分後(8:20AM)、ミナピン村への分岐で降ろしてもらう。ここから村までは4kmほどの歩きになる。一本道を歩き、最後に橋を越えて、40分後ミナピン村に到着(9:00AM)。村には活気があり、登校途中の学生や牛を連れて山へ放牧に出かける人など、人が外に出ている。ミナピン村では、Diran G.H.に泊まり、情報を集めてから出発するのが定番になっている。しかし、Diran G.H.は村の入り口からさらに1km以上先にあるため無駄に歩くことになる。登山口は、今越えた川の先にあるため、リンクロードを通って直接登山口に向かうのが手っ取り早い。この時点で午前9時。前日に来て泊まっていれば7時には出発していたはずなので、すでに2時間のロス。しかし、毎日コロコロ天気が変わるため、何もないミナピン村で"天気待ち"するのは避けたかった。

写真: アーリアバードから見たラカポシ。後日撮影

ミナピン村へのアクセス

  • カリマバードとギルギットの間にある村。幹線道路のKKHから少し離れているので、途中下車して4kmほど歩く必要がある。ギルギットから分岐点まで車で3時間くらい。カリマバードから30-40分くらい。
  • ミナピンへの直行ワゴンはギルギットとアーリアバードからそれぞれ一日一便。朝ミナピンから来たワゴンが、客を集めた後出発するので、アーリアバードを11AM?くらいに出発。到着が遅れるため、日帰りならば、ギルギット行きのワゴンに乗り、途中下車して歩いたほうが早い。
  • ギルギット行きのワゴンは、アーリアバードから一日数本。カリマバードから朝一本出ている。
  • カリマバード発のワゴンは、7時前くらいからホーンを鳴らしながらバザール通りを流して客を集める。ハセガワ・メモリアルスクールのさらに先の集落とフォートへの登り道の間くらいを2往復くらいして、客が集まったら出発。ゼロポイントで待っていても既に満席の場合が多い。フォート下か、ジャパンチョークくらいで待つのが確実。ミナピンまで100ルピー。
  • カリマバードから出た場合、KKHに降り、アーリアバードを通過し、フンザ川の橋を超えてすぐ、村への分岐点に出る。Diran G.H.への案内看板あり。ここまで1時間かからない。
  • KKHから村までは4kmほどの一本道、ピサン村を通り、橋を超えたら到着。ここまで、人通りは多いが、同じ方向に行く車がほとんどないのでヒッチは難しい。橋の後、Osho G.H.、商店、Post Office, リンクロードを過ぎ、さらに歩くと、村の外れにDiran G.H.がある。

ハパクンへの道

9:10AM、トレッキング開始。リンクロードに沿って川の奥のほうに進む。20分ほどで川を越える木の橋に到着(9:30AM)。そこから目の前の丘を30分ほどジグザグに登る。丘のうえからはラカポシが遠くに見える。この後、フラットな道が1時間ほど続く。途中、家畜小屋が10軒ほど並ぶ所を通過し、奥に見える滝を目指す。家畜小屋のしばらく後で、道が2つに分かれるが、右側の道が滝方面につながっている。滝から先は登りが始まる。滝の左にある急な登り道を進んでいくと、すぐに段々になった広いキャンプ地が見えてくる。15分ほど歩いて、キャンプ場の一番上の芝に到着(11:20AM)。この場所はハパクン(Hapakun、2804m))と呼ばれ、ここで一日目のトレッキングを終える人もいる。シーズン中は売店があるようで、テント小屋跡と思われる石垣が残されていた。ここまで村から2時間10分。フンザ川対岸の村を眺めながら10分ほど休憩。おやつのリンゴをかじる。


写真: ハパクンからフンザ川のほうを見る。

宿

  • 橋を渡ってすぐにOsho G.H。通りを進み、モスクのような建物を過ぎた先に、Diran G.H.がある。Diran G.H.は老舗的存在で、情報ノートもある。Osho G.H.は比較的新しいG.H. 共に泊まったことがないので細かいことはわからない。
  • 家畜小屋が3箇所ある。[1]小屋が10軒並ぶ所、[2]ハパクンのキャンプ場の上に一軒、[3] ベースキャンプに一軒。最初の2箇所はシェパードの老人が住んでいる感じだった。泊めてもらえるかどうかは、何とも言えない。

その他

  • 最初の丘を登ってから滝までは、草原や森のある平地になっていて、ヤギや羊が放牧されている。羊飼いのオジサンと何度かすれ違った。

ベースキャンプへの道

再スタート。キャンプ場の一番上に一つ家畜小屋があり、小屋から見て右手斜め前の山の斜面に登り道が見えているのでこれを登る。目指すは、正面に見えている谷の奥の丘だ。しばらく登った後、山の斜面に沿った道を歩く、左手側の丘に進んだ後、大きくクの字にカーブを描きながら丘を登る。登るにつれ、巨大なラカポシの山頂部分が見えてくる。キャンプ場から1時間ほどで、丘の上のビューポイントに到着。(12:25:PM)。そこからの景色はもう別世界。今までこの丘に遮られて見えなかったものが一気に目の前に現れる。雪山の連なりと大氷河が創る一面の銀世界。ウルタルとは比べ物にならなない大パノラマ。横一列に並んだ雪山は岩肌も見えず真っ白、眼下の氷河もあまり汚れていない。

右手側の道を進むと、崖沿いの道が見えてくる。絶景を見ながらの崖歩きは、このトレッキングのハイライト。5分ほどでベースキャンプのある草原に到着。ここの場所はタガパリ(Tagaphari、3261m)と呼ばれ、氷河とはモレーンで隔てられている。このキャンプ地は縦に長く、テント貸しなどのある中心部は、さらに5分ほど歩いた先にある。12時40分到着。ここまでハパクンから1時間15分。ミナピンから3時間半かかった計算だ。


写真: ビューポイントからベースキャンプに向かう途中の眺め。上: 左奥にディラン。下: 氷河の上の山の紅葉。
 

ベースキャンプ・ライフ

オフシーズンのため、予想通り誰もいない。家畜小屋が1,2軒あるだけで何もない。たまに氷河が崩れる音が聞こえるくらいで、風の音さえしない。この場所は、となりにモレーンがあるせいか、あまり寒くない。トレッキング中、山頂方面は雲っていたが、B.C.に着いてから、尻上がりに天気がよくなってきた。

写真: ラカポシ・ベースキャンプ。モーレンと山に囲まれた草地がキャンプ場。後ろの山がラカポシ。

モーレンからの眺め

実はB.C.自体はそれほど景色がよくない。キャンプ場中心部からは、南西にラカポシ・イーストが見えるだけ。ラカポシの山頂は見えない。南東側の景色はビューポイント同様にすばらしいが、となりの小山(モレーン)がビューを遮っている。幸い、この小山は簡単に登ることができる。中心部の小屋の裏の道を登り、モーレンの上に出る。見晴らしのいい場所に座って昼飯にする。ディランとそれに続く雪山を見ながら持参したリンゴを食べる。良く見ると、氷河の上に道らしきものが見える。ガイドを付ければ、この大氷河を歩いてディランB.C.(3650m)まで往復することができるのだ。さぞかし絶景だろう。すぐ近くの山ではすでに紅葉が始まっており、氷河とのコントラストがきれいだ。

天気は回復したものの、今朝のように雲ひとつない晴天ではない。真っ青な空を背景に同じ景色を見てみたかったが、今日の天気でも十分満足だ。そろそろ帰ることにしよう。

写真: モーレンから氷河奥のディラン(右)を見る。

補足

  • 時期によっては、ベースキャンプに牛がいる。実際糞がたくさん落ちていた。ということは、ビューポイントからB.C.までの崖の道を牛が歩いてきたことになる。人によっては、この道を危険という人もいるが、道幅も十分広く普通に歩きやすい。ただ、ガードレール的なものはない。

帰り道

結局B.C.で2時間ほどブラブラした後、下山開始(2:40PM)。 順調に歩き5時には橋に到着。ラカポシB.C.の登山道はよく整備されており、登りも下りも実に歩きやすい。この後、朝とは違い、Diran G.H.へ続く道を歩くことにする。道端では、子供らが元気に遊んでいる。この村でも、子供のおねだり攻撃はあるのだが、他の町とは少し違う。ここでは、"ハロー"に続く言葉が、"ワン・ペン"や"キャンディー"ではなく、なぜか"ウォーター"や"ビスコット"。つまり、おねだりアイテムがトレッカー対応しているのだ。

20分ほどでDiran G.H.に到着。このゲストハウスは村の端の静かな場所にある。登山口やKKHまで遠くて不便だが、一つだけ良い点を発見した。Diran G.H.からはラカポシ山頂が良く見える。朝、山の天気を確認するのに便利そうだ。ラカポシは川沿いの茶色い山の上に見えるため、橋のほうの集落からは、手前の山が邪魔でよく見えない。

写真: 要求どおり水をゲットする村の子供

補足

  • ミナピン村で子供の写真を撮ろうとすると、女の子だけ、キャッキャいいながら逃げていく。ここはカリマバードのようなイスマイール派ではなく、シーア派のためだと思われる。帰りに気づいたが、村の手前の橋には「Photography of Women is prohibited(女性の写真厳禁)」の注意書きが書かれている。

ラストウォーク

気がつけばもう5時半。辺りは暗くなり始めている。後は車を拾って帰るだけ、と甘く考えていたため少しのんびりしてしまった。よく考えれば、KKHまで歩いて40分。北行きのバスやワゴンがあったとしても、アーリアバード止まり。そこからカリマバードまでは、スズキになるが、そんなに遅くまでやっていない。もちろん、ヒッチハイクも可能だが、運次第なので当てにはできない。

とりあえずKKHまで歩きバスを待つ。幸い、アーリアバード行きのNATCOの大型バスがやってきたので、迷わず乗り込む(6:30PM)。しかし、途中道が悪く、ノロノロ運転で1時間もかかってアーリアバードに到着した(7:30PM)。終点のNATCOオフィスは、スズキ乗り場であるアルカリム・ベーカリー(AL-KARIM BAKARY)のすぐ近くにある。 少し待ってみたが、カリマバード行きのスズキが来る様子はない。たまたま、ガニッシュ(カリマバードの下の村)行きのワゴンがやってきたのでそれに乗り込む。ガニッシュ手前で途中下車し、ここから丘の上にあるカリマバードまで歩くしかない。道路に電灯はない上、村は停電中。他の同乗者と30分ほど歩き、ゲストハウスに到着した。ロウソクの灯された部屋で時計を確認すると、すでに夜8時を回っている。余裕なのか、余裕じゃないのか良くわからない日帰りトレックはこれで完結した。

補足

  • このNATCOバスはラワルピンディ発アーリアバード行きのバスだと思われる。途中乗車40ルピー。

感想

村からベースキャンプまで、登り3時間半。下り2時間40分。道路を歩いた時間も含めれば、合計8時間。 道はわかりやすく、トレッキング自体に問題はなかった。しかしスケジュール的には綱渡りだった。少し間違えば、その日カリマバードに帰れなかったかもしれない。たしかに日帰りは可能だったが、運と体力が最低条件だ。丸半日費やした長い一日だったが、後から思い返せば、たった半日と思えるに違いない。それほど、ラカポシ・ベースキャンプは魅力的だった。これだけの雪山を一度に見れるの場所は、そう多くない。ネパールのアンナプルナ・ベースキャンプくらいだろうか。日帰りはお勧めしないが、ラカポシはお勧めです。

 

 

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