ラダックの夏休み

ラダックの観光シーズンは7-8月で、ちょうど学生や社会人の夏休みと一致する。なにかと不便なこの町に長期滞在する人は結構多く、2週間経ったいまでもマナリーから同じバスでやってきた旅行者と街でばったり会ったりする。ラダックの夏のアクティビティをおさらいしてみたい。



旅行時期: 2009 年8月後半-9月前半
為替: 1ルピー = 1.91円
作成日: 2010.03.01

目次

 

* - 外部記事の紹介

レーの滞在環境

街を把握する

まずは、レーの町の構造を把握しておきたい。レーの街はコンパクトにできており、メインバザール通りとオールド・フォート通りで囲まれた部分が町の中心部(黄色のエリア)。その東側に旧市街(茶色のエリア)、西側にはフォート通りを中心に、ホテルやゲストハウスが集まる(紫のエリア)。北西方面にチャングスパ通りが伸びており、Shanti Stupaまでゲストハウスが軒を連ねる。

旧市街の南にはポログラウンドが見える。Friendship Gate(緑の丸)とポログランドの間にMoti Market。新バスターミナルはFriendship Gateの少し先。

右下の丘の上の建物がレー王宮。左上の雪山がストック・カングリ。山の下には、空港の滑走路が見える。町の西側や北側は、緑が多く乾燥したレーのイメージとは少し異なる。

滞在環境

旅行者に関係する情報をまとめてみた。

  • ゲストハウス: なぜかガイドブックに載っているG.H.はハズレが多い。 中心部から遠かったり、有名なのに、水シャワーしかなかったり、コンセントがなかったり。レーでは、バス付きの部屋がバス共同の部屋にくらべて極端に高い傾向がある。 平均的な安宿の料金は、共同シャワーで200ルピーくらい。その一方、ホットシャワー付きのダブルが300ルピーであっさり見つかったりする。チャングスパ通りのG.H.は、緑が多く旅行者に人気がある。個人的には、バス停から遠い上、雰囲気がないので好きになれない。
  • 食事: ツーリスティックなレストランがメインバザール、フォート通り,チャングスパ通り、などに多数ある。インド風中華やチベット料理も食べられる。 結構夜が早く、9時以降もやっている店は少ない。ローカル向けのチベット料理専門店が、メインバザールの東側の路地にいくつかある。ツーリステックな店よりは少し安い。私のお気に入りはYak Boy。ここのモモは他と違い、水餃子のようにジューシー (1 plate 50ルピー)
  • 自炊: Moti Marketなどで、ケロシンストーブが入手できる。1L用350ルピーから。 野菜はメインバザールの路上のオバサンか、オールドフォート通り裏の野菜マーケットで購入できる。マーケットのほうは、すべてスリナガル人の店で、果物など、地元でとれないものも扱っている。
  • ランドリー:   メインバザールからチャングスパ方面に向かう途中に、DzomsaとNew HighLandがある。 "環境に配慮した洗濯"が売りのDzomsaは1kgあたり70ルピー。 New HighLandは1アイテム15ルピー。 衣服にもよるが、たいていDzomsaのほうが安い計算。 チャングスパの奥のほうにもランドリー店あり。
  • ATM: メインバザールにSBI, Fort RoadにJ&K Bank。後者はよく故障しているので、日中、SBIのほうに長い列ができることが多い。SBIのATMは、なぜか、お金を引き出した後、20秒くらいしないとカードが出てこないようになっている。それが長い行列の原因のひとつ。ジェネレーター付きで24時間やっているので、すいている夜に下ろしておくのがいい。
  • インターネット: 多数。主に衛星回線を使用。1時間90ルピーで横並び。ラップトップが持ち込めるところが多い。 デリーで1時間10ルピーの店があるのを考えると、超割高。
  • 停電: ひどい。昼前から夕方に長時間。夜中に1,2時間停電する傾向がある。これが季節的なものなのか、いつもそうなのかはわからない。
  • 交通: オートリキシャはなし。タクシーのみ。

補足

  • Dzomsa: 出会いの場の意味。ランドリーに加えて、アプリコットのジュースや加工品他、エコロジーをテーマにした商品を扱っている。飲料水のリフィルに来る旅行者でいつも賑わっている。支店が2つある。
  • 私のお気に入りの野菜はグリーンピース。生で食べれるのがありがたい。500g15ルピー

  • ケロシンストーブ。トレッキングやテント小屋でも同じものが使われる。

民族衣装を物色

メインバザールからオールドタウンに足を踏み入れると、そこには観光客向けではない、ラダッキーの世界。ポログラウンドへ向かう途中にある民族衣装ショップで相場を聞いてみた。

衣類

  • ゴンチェ(ウール製のガウン): 500-600ルピー。女性物は腰の下にフレアーがついている。
  • ベスト: 400-500
  • ゴンダ(シルクハットのような帽子): 300
  • 先の丸まった靴: 500

これだけ揃えれば、ラダッキー風の格好をすることができる。ペラク(コブラのような被り物)も骨董品店のようなところで見かけた。Moti Marketで、袈裟を扱っている店あり。

写真: 店先に吊るされたゴンチェとベスト。

その他

  • 線香(incense) 10-20ルピー
  • タルチョ(ハンカチサイズのマントラの書かれた旗) - 10枚セット25ルピー??

 

補足

  • ゴンダ(gonda)と線香

  • タルチョ

  • ペラク(perak)

 

 

キング・オブ・ゴンパ ティクセを訪問

ラダックといえばゴンパ。各村に立派なゴンパ(僧院)があり、それぞれ個性がある。その中で、ひとつオススメを選ぶとすると、私はティクセ・ゴンパを挙げたい。この地域では、へミスと並ぶ人気のゴンパであるが、ティクセには何か生き生きとしたものが感じられる。加えて、レーからのアクセスもいい。

Pujaは必見

ティクセといえば、そのインパクトのある外観。白い僧坊で埋め尽くされた山の斜面は、何か巨大な建造物のようでもある。そして、絶対見逃せないのが、朝のプージャ。どのにでもある朝のお経の時間だが、ゴンパによって見学のしやすさに大きな差がある。ティクセの場合、毎朝欧米人の団体がやって来るので敷居が低い。一番驚きなのが、観光客が僧侶の列と列の間に座って見学していいところ。普通はありえない。

プージャはだいたい朝7時ごろスタートする。10分前くらいに子供の僧侶がお堂の入り口に集まり、何か歌を歌い始める。実は、プージャの参加者の半分は小学生くらいの坊主なのだ。中に入ると、入り口左の壁付近、建物右側の壁沿い、そして、僧侶の列の間に欧米人の団体が座って開始を待っている。せっかくなので私も列の間に座った。

僧侶は2列 x 2列で向かい合って座り、入り口に近いほうに子供の坊主、奥のほうに年配の僧侶が座っている。少年僧侶は、終始おしゃべりしたり、お経をわざと大声でよんだり、退屈なプージャの時間を少しでも楽しむの忙しい。私は僧侶の列の間に座っているので、真後ろにいる彼らの行動が手に取るようにわかる。

写真: 上: お堂の入り口前で、突然合唱を始める小坊主たち。左: 目の前の僧侶の列(1列目), 右: 後ろの僧侶の列(2列目)。

お経合唱団

ここのプージャの特徴は、お経の唱え方が少しエンターテイニングなところ。何か合唱でもしているように、大人の僧侶と子供の僧侶の声がシンクロして盛り上がっていく。 ラッパ、太鼓、シンバルなどの楽器もより効果的に、頻繁に使う。 何か楽しげで、見ていて飽きない。

お経の節目が来ると、なぜかお茶の時間になる。さっきまでお経を読んでいた子供の一部が、ヤカンやバケツを引きずるように持って堂内を駈けずり回る。ヤカンにはバター茶が、バケツにはツァンパ用の粉が入っている。僧侶達は、粉とバター茶を手で練り合わせて、饅頭のような形にして口にほうばる。少し時間が経つと、すぐにお経を再開する。どうもお経と朝食を兼ねているようだ。私が見学した日のプージャは、比較的長く、8:50まで続けられた。開始時にたくさんいた、欧米人観光客は1時間くらいで退散した。

リピートしたくなるゴンパ

プージャの後は、中庭を抜けて右手側の建物へ。 ここには14mの仏像が鎮座している。入場できるのは二階部分で、ちょうど仏像の上半身が見える。仏像正面の壁際には絨毯がひかれている。 その上に座り目を閉じてみる。静かで落ち着いた時間が流れる。無の世界の充実感を十分に味わった後、ゴンパを後にした。何度でも来たくなる気さくなティクセ・ゴンパ、やはりオススメです。

写真: 上: お茶当番の小坊主。下:14mの仏像

Thikse Gompa

  • たいていのゴンパは、プージャの参加人数が少なく見ごたえのない。また、堂内に座って堂々と見学できる雰囲気ではない。
  • 欧米人は、プージャのような東洋神秘的なものが大好きで、朝一で、ティクセのプージャを見学して、その日のゴンパめぐりをスタートする。
  • 他に朝のプージャで有名なところは、スピティのタボ・ゴンパ。ここは、3列x3列くらいに僧侶が向かい合って座り、お経を唱える。その回りを壁沿いに観光客がぐるっと囲んで座る。より厳格な雰囲気で、写真を撮る人はいなかった。
  • 僧侶の列の間に座る: 恐らく、座る場所のない団体客が、深く考えずに僧侶の前に座りだしたが始まりだと思う。それが定着してしまったようだ。
  • レー からティクセまでバスで40分弱。さらに丘の上まで登る必要があるので、朝6時にはレーを出なければならない。その時間にバスや乗り合いタクシーがあるかというと、たぶんない。ただ、プージャは8時過ぎ、時には9時近くまで続くので、全く可能性がないわけではない。私はオートバイをレンタルしていたので、時間的な制限はなかった。
  • 確か、へミスも朝7時からプージャが行われて、観光客に公開されている。

チョグラムサルでTCV訪問

インド各地に展開する亡命チベット人のための教育機関TCV (Tibet Children's Villeages)。ダラムサラでの訪問は結構楽しめた。レー近郊、チョグラムサルのTCVは、最も成功しているTCVだとどこかで聞いた気がする。こちらも覗いてみることにした。

TCVはチベット人移住地の奥、山のほうにある。訪問したのは、クラスも終わっている夕方。オートバイでのゴンパめぐりに忙しく、チョグラムサルまで戻ってきたら、もう4時半を過ぎていた。入り口の守衛に、オフィスで許可を得るように忠告を受けたが、適当に返事して、道を進んでいく。売店、運動場、校舎を過ぎると、寄宿舎らしきものが見えてきた。

寄宿舎に招かれる

実はオフィスを探してここまで来たのだが、もうどうでも良くなってきた。建物の中から、生徒が手招きしているので、寮の中に入れてもらうことにする。寮は平屋でガーデンまである洒落た造り。建物に入るとすぐに広いオープンスペースがあり、それを取り囲むようにシンプルな寝室が2つ、さらに奥にキッチンがある。寝室は2段パイプベットを5個並べただけのシンプルな造りで、私を手招きしていた少年達が暇そうにくつろいでいた。そのうち2人は制服を着たチベット人で、2人は私服のラダック人。他にも年少の子供がうろちょろしている。私服の子供が多いので、ここの生徒なのか、近くに住んでて遊びに来ているだけなのか、判断できない。

などと考えているうちに、突然、学校の先生がやってきた。ちゃんと許可を取ってから訪問するようにとのこと。生徒にいろいろ聞いてみたかったが、今日は退散することにする。結局、スケジュールの都合で、再びここを訪れることはなかった。 今回、唯一の成果が寝室で撮った1枚のボケた写真。ダラムサラの時より半歩前進したのでよしとしよう。

写真: 上: 寄宿舎の寝室。10人部屋。 下: 寄宿舎の建物。庭と入り口。

補足

  • どのガイドブックにも記述がないので、恐らく訪問者は少ない。
  • よく注意してみると、チョグラムサルでは、TCVの制服(青いズボン、緑のベスト、水色のチェックのシャツ)を着た子供ををよく見かける。レーから通う生徒もいる。
  • ダラムサラでは許可は不要だった。ただ、日中だったので、寄宿舎に入れる雰囲気ではなかった。
  • オフィスは入り口の目の前にあったのだが、単に気づかなかった。写真を撮りたければ、平日の9時に来て、許可を取るように言われた。
  • [看板より] Visiting Hours: Summer 8:00AM-1:30PM, 2:30PM - 5:00PM。 Winter 9:30AM - 1:30PM 2:30PM - 4:00PM。
  • ダラムサラ TCV訪問

バイクでゴンパめぐり

レーでの主要アクティビティといえば、近郊の村にあるゴンパめぐり。しかし、バスの便が多くアクセスがいいのは、スピトク、シェイ、ティクセ、スタクナくらい。その他のゴンパは行くだけで半日覚悟。タクシーは高いので個人では使いにくい。そこで、オートバイをレンタルしてゴンパを一気に回るという作戦を考えてみた。

とはいえ、私はスクーターにさえ乗ったことがない。もちろん運転の仕方もわからない。それでも、小さな困難をいくつか乗り越え、周辺ゴンパを一日で回ることができた。そこには、青空の下、風を感じながら走る快適なクルージングが待っていた。


トレッキング

ラダックのトレッキングシーズンは7-8月で、観光シーズンとたまたま一致している。トレッキング客のほとんどが欧米人で、日本人はあまり見かけない。その理由としては、ガイドブックに記載がないことや、もともとトレッキング目的で来る人が少ないことがあげられる。また、ツアーの場合、ある程度人数が集まらないと割高になるので敷居が高い。 幸い、ここ数年、トレッキング・ルート沿いの村で民泊できるようになり、"手ぶら"でトレッキングする環境が整いつつある。ラダックを代表するトレッキング・ルートであるマルカ谷で、個人トレックは可能かどうか検証してみた。

  • マルカ谷 D.I.Y. トレッキング (作成中)

ダライラマ・ティーチング

ダライラマは夏にラダックを訪れ、説法(Teaching)をすることが多い。ここ最近では、2007年、2009年、レー郊外のチョグラムサルで説法が行われた。ティーチング自体はつまらないが、ダライラマを近くで見る数少ない機会である。一万人を超える観衆を集めた2009年のティーチングの模様をレポートしてみたい。

  • 夏のダライラマ対策 (作成中)



ラダック・フェスティバル

9月に入ると、天候は少しずつ不安定になり、観光客の数も減り始める。それを食い止めるために9月前半という微妙な時期に開催されるラダック・フェスティバル。州の観光局主催で、歌、踊り、スポーツ、パレードなど、ラダック文化をちょっとづつ味見できるようになっている。 ラダック滞在を延長してまで見る価値があるのか、人柱になってほぼ全イベント参加してみた。

 


最後に

9月も中盤となると、観光客は少なくなり、メインバザール名物のATM行列もあまり見かけなくなる。ゲストハウスのオバサンも「ついに、あなたも行っちゃうのね」と半ばあきらめムード。レーの短い夏はツーリストと共に去り、人々は厳しい冬に向かって準備を進める。真っ青な空の下、世界中から集まった旅行者達。楽しかった日々、ラダックの夏休みは、ここでしか味わえない「何か」をたくさん与えてくれた。

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